2022-01-01から1年間の記事一覧
私の住む北鎌倉界隈にはお寺が多い。お寺が多いどころか、お寺と山しかない、と冗談で申し上げるほどに、お寺と山に囲まれている。お寺は山にあるものだから、やはりお寺が中心ということになろう。 私は特定の宗教を信じていない。無宗教である、と断言する…
「ファミリー」と頭に付くものは別として、コンピュータと初めて触れ合ったのは高校生の頃だったろうか。電話回線を通じて遠隔地と通信ができる、ということも高校生のときに知った。パソコン通信と呼ばれたものだ。大学生になって、学校に備わっていたアッ…
一九九〇年代の話。大阪梅田の商店街に大きなペットショップがあった。今はもうそのお店はなくなっていると思う。犬や猫の他、爬虫類や猿などの種も売られていた。何度目かのペットブームだったのだろう。その過熱ぶりを象徴するかのように珍しいとされる動…
我が家では、犬の行動範囲が月日を追うごとに拡がっていった。今や禁止されている場所は台所くらいのもので、その他は自由に行くことができる。最初の一年間は、二階へ来ることを禁じていた。寝室も仕事部屋も二階にあるので、寝るときと仕事をしているとき…
人間の子供たちの成長は体感としてとても速い。知り合いの子供たちもあっという間に大きくなっているし、顔つきも背丈もどんどん変わる。犬の成長はそれ以上に速い。そのように感ずるのは、人間の寿命を基準とした時間感覚を犬に当てはめて考えているからだ…
ユクの大好きなお隣さんが引っ越してしまった。黒柴君のことも、その飼い主であるご夫婦のことも、ユクは大好きだった。最後、挨拶に来てくださったときも、ユクは恥じらう乙女のようにご夫婦にすり寄っていた。飼い主である私たちにもここまではしないので…
これまでの人生で何度か、明日死ぬ、という夢を見たことがある。この場合の夢とは、叶えたい夢ではなくて、寝ているときに勝手に見てしまうほうの夢である。毎回、夢の中でうろたえることはうろたえるのだが、結末は同じ。寝るのだ。ああもう、寝て死にます…
ユクが人間なら、あまり友達にはなりたくない。大変身勝手だからだ。これまでに何度もワンプロをして遊んでもらっていたお友達の犬に対して、急に冷たい態度を示し、俺そういう遊びは卒業したから、というような顔をすることがある。見ているこちらの腰が砕…
動物病院へ行き、狂犬病ワクチンと健康診断をしていただいた。先生には「少し太っていますね」と言われた。もちろん飼い主ではなく、犬のことだ。ユクが太っている?どちらかと言えば、痩せて見えて、飼い主がきちんと食事を与えてないのではないかと疑惑を…
インターネットの民間への普及黎明期から、インターネットに触れてきた。日本では、一九九〇年代の前半、九四年辺りからインターネットが知られはじめた。光回線などなく、電話回線にモデムを繋いで、ピーガラガラガラガラとやるものだった。インターネット…
一歳半を過ぎたあたりからだろうか。ユクがマーキング行動をしはじめた。九ヶ月齢くらいで家へやって来た後、半年と少しの間は、まったくそのようなことはなかった。 お散歩の最初におしっこをすれば、その後は嗅ぎまわるだけ。ひと様のお家の前や電柱におし…
同じ犬種でもまったく性格が違う。性格の傾向というものは存在するようだが、そういうものはあまり当てにならないだろう。人間において考えてみても同じことが言える。誰ひとりとして、同じ人間はいない。似たところを見つけることは容易だが、まったく同じ…
ユクは食べ物を貰えそうだと、お座りをして、じっと待っている。両眼はまっすぐに食べ物のほうを向いている。片時も目線を逸らさない。よそ見をして、その機会をなくしてしまったら大変だ、必ず生き抜いてやる、という気概を感じる。 野良犬であった数ヶ月間…
ブラジリアン柔術の試合に出てきた。齢五十を過ぎて、こんなことをする人生になろうとは想像もしなかった。煙草の煙が漂うライブハウスに出入りをし、不健康そのもの、運動やフィットネスとはほど遠い人生を歩んできたからだ。十代までは運動が得意で何でも…
私が小学生の頃のお話。学期の最後に成績表を先生からいただく、通知簿と呼ばれるものだ。できることなら親にこれを見せたくはなかった。そのようなことは無論許されるわけもなく必ず両親に手渡された。なぜ見せたくなかったか、というと単純な理由で、成績…
牛丼は吉野家のものが好きだ。棋士、村山聖も言っていたが、牛丼は吉野家でないといけない。松屋もすき家もなか卯もそれぞれ美味しいとは思うが、それは、吉野家あってこそ、なのだ。湖池屋のポテトチップスが美味いのも、カルビーのポテトチップスがあるか…
懐かしいということは、生きてきた証しでもある。経験し記憶し、それを思い返すとき、懐かしい、と感じるものだからだ。生きていてもすべてを忘れてしまっていては、懐かしむことはできない。心に刻むからこそ懐かしいのだ。 ここへ初めて来た日は、不安でい…
ユクがお母さん犬からはぐれてしまったパターンは色々と想像した。宮古島で親犬を飼っていた方が、子犬だけ捨ててしまったのか。しばらく集団で行動していたけれど、ユクだけ崖から落ちてしまったのか。ユクの後ろ脚には骨折の跡があるので、それはそのとき…
宮古島で保護された犬と暮らすようになってから、現地の状況(保護される犬が多いこと)を少し知ったこともあり、宮古島の保護犬たちのことを気にかけるようになった。特段何かをするわけではない。宮古島で保護活動をされている団体のSNSアカウントを見て、…
動物に人間の手から食べ物をやる、ということをこれまでの人生で何度かは、したことがある。ハムスター、猫、カメ、そのようなところだろうか。犬には立派な牙がある。はっきり言って怖い。普段はオテやオスワリを命令していい気なものだが、犬に本気を出さ…
由比ヶ浜へ散歩に出かけた。決して海には入らないが、砂浜を前にすると、信号待ちでもそわそわして、一刻も早く砂を踏みしめたい、という顔をするユク。信号を渡ると、グイグイとリードを引き、砂浜へ走る。 ゴールデンウイークの由比ヶ浜は、若い子たち(人…
ユクがうちへ来て、二年が経とうとしている。最初の一年目より、この二年目のほうが早かった、と感じる。人生の体感が加速するように、ユクとの暮らしも加速しているのだろうか。犬の一生は人よりも短い。だからこそ、ユクとの一日を時間を大切にしたい、と…
犬の一生の長さを人間のそれと比較して悲しむなど、まったく人間の勝手な押し付けであるということは何度も書いた。それはそれと分かっていながら(完全には受け入れていないからこそ自らに言い聞かせるように何度も思考がめぐるのだろうが)、犬の一生の短…
ユクにはいくつかのおもちゃが与えられている。ぬいぐるみの類はすぐに破壊され、内臓(綿です)がぶちまけられる。ゴム製の歯応えのある物は案外すぐに飽きる。ユクと同郷の犬たちが好んでいるというお肉のぬいぐるみをあげてみた。これは気に入ったようだ…
春がきた。少し飛び越して夏を感じるほどの日もすでにある。日が延びて、夕刻のお散歩にゆとりができた。成長を見越して購入されたと思しきブカブカの学生服を着た中学生たちが線路の横で電車とかけっこをしている。お!かけっこ遊びやるのか?という感じで…
先週末。ユクを連れて、由比ヶ浜へ出かけた。夫婦ともに休みの日には、少し足を延ばした散歩に出かけることがよくある。北鎌倉から鎌倉までの道中、ユクはいつもと違う感じを嗅ぎ取っているのか、グイグイと引っ張る。この調子でグイグイやると、帰りに疲れ…
少しずつ、といっても、気づいたときにはそれは、いつのまにか、であり、こんなにも、でもある。横断歩道で、クルクル回って興奮して渡るようなことが減ったり、他の犬とのご挨拶もいくらか静かにできるようになっていたり、ふと、その変化に気づく。それら…
誰かが手を振っているな、と思って近づいてみたら、見知らぬ人で、自分の後ろにいる人に対して手を振っていた、ということに近いことは誰しも経験したことがあるだろう。知らない人に笑い返したり、手を振り返したり、挨拶したり、ということは確かに恥ずか…
物理的な本をあまり読まなくなった。読んでいるのは、電子書籍と呼ばれるものがほとんどだ。買うときも、電子版がないと購入することを少しためらうようにまでなってしまった。紙の本に備わる良さは沢山ある。本全体において、いま自分がどのくらいの位置に…
ユクの名前はアイヌ語の「鹿」に由来する。鹿のような模様が体表に見られるから、そう名付けられた。最近、近所の方に、「ユクちゃん、斑点増えた?」とか「茶色が沢山出てきた?」などと声をかけられる。少し暖かくなってきて、着せていたコートが取れたので…