ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

犬の匂い。

一九九〇年代の話。大阪梅田の商店街に大きなペットショップがあった。今はもうそのお店はなくなっていると思う。犬や猫の他、爬虫類や猿などの種も売られていた。何度目かのペットブームだったのだろう。その過熱ぶりを象徴するかのように珍しいとされる動物が多数取り扱われていたように記憶する。そのような珍しい動物を飼いたいということではなく、当時は動物園に行くような感覚でそのお店に何度か行ったことがある。

そちらのお店とその周辺に立ちこめる匂いが凄かった。動物の匂いなのか、動物に与える食べ物のそれなのか、消毒するための薬品によるものなのか。それらすべてが混ざったものなのか、とにかく強い匂いがした。動物をゆっくり観たかったが、その鼻をつく匂いのせいで、決して長居はできなかった。ここで働く人たちは大丈夫なのだろうか、と心配してしまうほどだった。

ペットショップ未体験犬。

動物の匂いというものは、動物園などでも感じることがある。犬と一緒に暮らすにあたり、そのような匂いの問題について、少しは気になっていた。おそらく前述のペットショップでの体験が原因で、ペットフードの匂いも私にとって「嫌な匂い」という認識になっていた。

いま、ペットフードや犬の匂いについてどう感じているかというと、何とも感じていない。すぐに私の認識は更新されたようだ。ペットフードの匂いは単にペットフードの匂いになった。嫌な感じはしない。さらに動物の匂いについてはどうか。積極的に犬の足の裏にある肉球の匂いを嗅いだりしている。「香ばしい」とされるこの肉球の匂いは、嫌な匂いどころか、良い匂いにすら感じられる。

ヨガ、犬のポーズ(違うと思う)

シャンプーをした後の犬は、とても良い香りがする。体毛もサラサラだ。しかし、もはやそれでは物足りないと感じるようになってしまった。匂いだ。シャンプーから一週間ほど経ち、少し「犬の匂い」がしてきた頃のユクが好きだ。

臭豆腐。ひとつも完食できなかった。

台湾へ行ったとき、臭豆腐というその名の通りとても臭い食べ物に挑戦したが、結局食べることはできなかった。あれも珍味とされ、好きな人にとってはたまらない食べ物だそうだ。あの匂いの認識を更新することなどできるのだろうか。犬の匂いが嫌いな人もそのように思っているのかも知れないが。

台湾のファミマでのひとコマ。