ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

脚の長いジャックラッセルテリア。

先週末。
ユクを連れて、由比ヶ浜へ出かけた。夫婦ともに休みの日には、少し足を延ばした散歩に出かけることがよくある。北鎌倉から鎌倉までの道中、ユクはいつもと違う感じを嗅ぎ取っているのか、グイグイと引っ張る。この調子でグイグイやると、帰りに疲れるよ、という理屈は無論通らない。

信号待ちで海の香を楽しむユク坊。

由比ヶ浜目前の横断歩道で信号待ちをする。その日は風もなく浜を歩くのに良さそうだった。信号が青に変わる前から、ユクは向こう側の浜へ行きたくて仕方ないようだ。青になって、人が渡り始めると、くるくる回りながら、私をおいて妻と浜へと向かって行った。

浜に下る階段を全速力で走り、着くなりまたさらに回転しながらはしゃぐユク。そして、「阿呆」にもなり、妻の周りをぐるぐる駆け始めた。帰りのことなど考慮していない。うれしすぎるのだ。私たちも海に来るのが好きなので、ユクも海が好きで良かった。

浜でいたずらにいそしむユク坊。

由比ヶ浜海岸は、犬の散歩に来ている人も多い。来れば必ず新しい犬に出会える場所でもある。ユクの社会性を育てるためにも、適している。

ユクはどちらかと言えば人が苦手だ。犬のほうに興味が行く。犬を連れている人ならばまだ近寄ることもあるが、人だけだと、まず警戒心が勝ってしまうようだ。つまり、人に対してあまり愛想のない犬を連れているなのだ。ユクのことを可愛いと褒めてくれて、近寄ってきてくださっても、唸ってしまったり、吠えてしまったり、もしばしば。

水とはこのくらいの距離は必要だけどね。

波打ち際を歩いていると、犬連れでない女性がユクを見て、写真を撮っていいですか、と、尋ねられた。ユクもまんざらでもない様子でポーズを取っている。聞けば、飼っていた犬が昨年十六歳で亡くなってしまったそうだ。そして、その犬がユクに大変似ているということだった。今はここに、と女性が指差したのは首から下げた銀のペンダントトップだった。
ユクと似ているということなので、ミックスだったのですか、と尋ねたところ、いいえジャックラッセルテリアです、と返ってきた。その子は脚が長いジャックラッセルテリアで、ユクと体型も顔も似ていたのだそうだ。

撫では特別な人にだけ。

写真を撮っていただいているときも、悪い気はしないねぇ、というような顔をしていたユクは、珍しくその女性が近づいても唸ることなく、撫でてもらっていた。偉いぞユク坊!女性のお話を聞いているので、こちらの目頭が熱くなるご対面だ。

この辺りによく、一緒にお散歩にきていました。とおっしゃる女性の表情は元気で晴れやかだった。もちろん、ひとときのことなので、ペットロスを完全に克服されているのかどうかなど知る由もない。しかし、ユクが亡くなったあと、私もこの女性のようでありたい、と思った。