ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

信心。手を合わせる美しさ。

私の住む北鎌倉界隈にはお寺が多い。
お寺が多いどころか、お寺と山しかない、と冗談で申し上げるほどに、お寺と山に囲まれている。お寺は山にあるものだから、やはりお寺が中心ということになろう。

私は特定の宗教を信じていない。無宗教である、と断言するものでもない。小学生から中学生の頃まではプロテスタント教会で行われる「日曜学校」に通っていた。聖書のお話が好きだったのと、教会にいる外国人の友達とお話できるのが楽しかったからだ。実家には仏壇があったし、神社にお参りにも行く。もちろんクリスマスも楽しむ。

匂いの宝庫よ。

神社仏閣では、手を合わせることはあっても、お願いごとをすることはない。まったくしないわけではなく、お願いごとをする神社を決めている。決まった神社には、お礼のお参りにも行っている。信じていないようで何かを信じているのだろう。ことがうまく行ったとき、自分の手柄ではなく、お願いしたからうまく行ったのかも知れないとも考える。だからお礼参りをするのだ。このお礼参りのことを考えると、さまざまな場所でお願いごとをすると後で大変になるので、お願いごとをする神社を決めている次第である。

ここは涼しいね。

ユクの散歩で、毎朝お寺に行っている。参道は夏でも日陰で涼しい。こちらで近所の犬にお会いすることもよくある。近所の知っている犬であれば、ユクもすっかり落ち着いたもので、大人の対応をしてくれる。犬が落ち着いていると飼い主同士の会話もゆっくりできるというものだ。

弾むように歩く近所の可愛いシュナウザーがお父さんとやってきた。
このお父さんは、多趣味で毎日の予定もいっぱいだ。なぜいっぱいだ、と知っているかというと、いつも予定をすべて教えてくださるからだ。今朝は、「今日はね、これからうちで麻雀。みんな来るの」とおっしゃっていた。

ユクがトイレの構えをしたので、私はしばらくユクの世話をした。ふと、顔を上げると、シュナウザーのお父さんがお寺のお堂に向かって脱帽し、手を合わせていた。

「麻雀で勝てますように、ってね」
と笑った。

そのときは私も一緒に笑ったが、思い返せば、あれは照れ隠しだったのかも。
何より、とても美しい瞬間を見せていただいた。