ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

波があります、とは一体?犬の通知簿。

私が小学生の頃のお話。
学期の最後に成績表を先生からいただく、通知簿と呼ばれるものだ。できることなら親にこれを見せたくはなかった。そのようなことは無論許されるわけもなく必ず両親に手渡された。なぜ見せたくなかったか、というと単純な理由で、成績が良くなかったからだ。五段階評価で三がもっとも多く、二もちらほら、僅かに四がある程度のもので、五は皆無という散々なものだった。

通知簿?いや、今日はもらわなかったかな?

この通知簿には、先生から保護者へのメッセージ欄のようなものが存在していた。ここは大人から大人へ伝えるための言葉遣いで書かれているので、子供が見ても今ひとつ何のことを書いているのか分からないことがあった。

 

あるとき、その欄に、「性格に波があります」と書かれているのを見つけた。波ってなんぞや。俺の性格は波打っているのか、さざ波のような性格なのか、波に乗っているような性格なのか。冗談はさておき、子供の私にはさっぱりその意味が分からなかった。

感情の起伏が激しかったり、気分がコロコロと変わったりすることが、先生のお気に召さなかったのだろうと思われる。しかし、各種の感情を表現できるということは、人間として大変豊かなことではないか。

豊かな表現なら得意。

ユクに通知簿があるとすれば、メッセージ欄には「性格に波があります」と書かれるに違いない。仲良くご挨拶していたかと思えば、もういい加減にしなさい、とばかりに威嚇したりするからだ。ぼんやり見ていると、気分が突然変わったように見える。だが、犬をよく観察していると、気分が変わるまでのプロセスというものが存在していることに気付く。犬同士互いに匂いを嗅ぎ合って、すんなり終われば良いのだが、相手の犬にしつこく嗅ぎ回られるとユクの耳が後ろに倒れて顔が少し緊張し始める。堪忍袋の緒が切れる寸前では、マズルの上側部分にシワが寄る。これはかなりの末期状態、つまり、マジでキレちゃう五秒前、である。

やるか?モードのユク坊。

気分屋に見えるユクも、その行動にはユクなりに理由が存在するように見える。

つらつらと考えを述べてきた。すでにお気づきのことだと思うが小学生の私を少し肯定してやりたいのである。