ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

家族会におよばれした犬。【夢が現実に!編】

ユクがお母さん犬からはぐれてしまったパターンは色々と想像した。
宮古島で親犬を飼っていた方が、子犬だけ捨ててしまったのか。しばらく集団で行動していたけれど、ユクだけ崖から落ちてしまったのか。ユクの後ろ脚には骨折の跡があるので、それはそのときに負ったのではないか。クン活に夢中になると、いまでも崖から落ちそうになるので、十分に考えられる。リードがなければ落ちていたな、ということもしばしば。

ひえーあぶねー

SNSで、犬が親子かも知れないと声をかけてくださり、繋がりができた。
パンデミックのこともあり、なかなか気安くお会いすることも叶わない時勢である。スマートフォンで、親かも知れない兄弟かも知れない犬たちを眺める日々が続いた。

蔓延防止の条例や緊急事態宣言などが解除された2022年の春、「ゴールデンウィークに家族会を行いませんか」との知らせが届いた。いよいよ実現する、ユクの親、弟や妹(かも知れない)犬たちとのご対面である。社会性に不安のあるユクだ。心配事はいっぱいだが、出会わせなければ、死んでも死にきれない。ユクは一緒に保護されたわけではないのに、家族会に呼んでいただけて、本当にありがたい。

当日の朝。なにをワクワクしてるの?という顔で見つめるユク坊。

ユクに大変似ている「凪ちゃん」の住むお家にお招きいただいた。そこはなんと、となり町程度の距離だ。宮古島で保護された犬たちが、神奈川県の案外近く同士で暮らしている不思議。自動車でのお出かけで、ユクはごきげんだ。凪ちゃんのお家の前に着くと、凪ちゃんの子、イルちゃんが出迎えてくれた。スマートフォンの画面でしか見たことのなかったイルちゃんが目の前にいて、私は胸躍った。ううううぐわん!ぐわん!後部座席でユクが吠えている。ユク坊、どちらかと言えば、君のほうが侵略している側だぞ……。

笑顔が眩しいアイドル犬!イルちゃん

ユクの行動に不安を抱きながらも、可愛いイルちゃんとご家族の方々にご挨拶をした。緑のきれいな芝生のお庭にテーブルと椅子をセットしてくださっていた。目の前にある芝の絨毯。ここで凪ちゃんたちがワンプロをして駆け回っている様子をSNSでいつも拝見している。同じ芝に私たちはもうすぐ、立てる!
幸い、車から降りて、イルちゃんに近づいていくと、ユクは落ち着いていた。そして、さっそくワンプロを始めた。その日、ユクのワンプロは逃げるスタイルであることを確信した。ドッグランなどでも、いつも追いかけられて、逃げる側をやっているな、とは思っていたが、ここでもそのスタイルを貫き通していた。妹犬(と呼ばせていただく!)とお利口に挨拶ができ、ワンプロまでさせていただけて、まずはひと安心した。イルちゃんが優しい。来てよかった。

優しいイルちゃん

いぶき君とユク坊。よく似ています。

ほどなく、弟犬(と呼ばせていただく!)のいぶき君もやってきた。いぶき君は、子犬の頃に一緒に保護されたので、正真正銘、凪ちゃんの子だ。いぶき君のことも沢山SNSで見てきた。目の前にいるのは本物、直に見ても顔や後ろ姿がユクにそっくりだ。柄違いと言って良いくらいに全体的にも似ている。一緒にいるところを見ると、身体の大きさが違って、いぶき君のほうが少し大きい。ビビリのユクもイルちゃんの仲介(?)もあってか、いぶき君ともご挨拶できた。

ユクのワンプロは逃げるスタイル

犬の社会では、どちらが優位か、ということが大切なようだ。挨拶代わりのワンプロで先にリタイアしたユクは少し、いぶき君に対して遠慮気味になっていた。しかし、その後テーブルの下で、食べ物のことでユクがいぶき君を威嚇し、いぶき君はユクに対して、少し面倒な奴だな、と距離を置いたように見えた。
その後、私がユクにおやつを与えていたとき、近づいてきたいぶき君に対して、ユクが強めに威嚇した。いぶき君も即座に応戦して、ユクを威嚇、二頭が揉み合った。私はそこへ割って入って、二頭を引き離した。その一件で、ユクは完全にいぶき君に対して、ビビってしまった。自分でけしかけておいて、である。これで何かを学んでくれていればよいのだが。ユクの食い意地(もしくは所有欲)については、少し頭を痛めている。そのことについては、また改めて書きたい。

凪ちゃんは子供たちを守っています。

母犬の凪ちゃんは、よその犬に吠えてしまう、ということを事前にうかがっていた。子犬たちを守らなければならなかった、かつての環境がそうさせて、その習性が残っているのではないか、など、また勝手な想像を巡らせる。犬に言葉で、「きみのお母さんだよ」「あなたの子供ですよ」などと伝えられればよいのだが、無論そういう方法は取れない。匂いで分かり合えるのではないか、と人間の及びもつかない能力に期待してみたが、そういうことでもなさそうだ。ユクを見ても、凪ちゃんは、「誰よ、あの犬は!うちのイルに何してくれてるの?私の家に何しに来たの!?」という表情と態度であった。いまは一緒に暮らしていない、いぶき君に対しても同じ態度なのだ。匂いで子供だと分かる、ということはやはりないのか。

初めてお会いするご家族なのに、暖かく私たちを迎え入れてくださり、すっかり長居させていただいた。本当に気持ちの良い午後だった。

ユク、あなたはくつろぎすぎです。

警戒する凪ちゃんに、不思議とユクは何度も近づいていった。
近づくと吠えられるのだけど、いつものように自分から吠え返したりはしない。あきらかに凪ちゃんに興味を持っている。そんなことはないとは思うが、「あれ?お母さん……じゃないの?」と吹き出しを付けたくもなる。

凪ちゃんは、よその犬には吠えるが、人間には吠えない。私たち夫婦は凪ちゃんを触ることも撫でることもできた。やっと会えたよ。きっとお母さんだよね。

「ユクを産んでくれてありがとうね」