ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

待つ犬の姿。

じっと待っている。一応、犬の話だ。 これはおやつ待ち。 朝、トーストなどを食べていると、食べ終わりそうな頃を見計らって、ユクが膝もとにやって来てお座りをする。視線は人間の手に注がれ、あるいはその先――机の上に置かれる、こんがりとバターが溶けた…

変わる街と変わらない山。

年に数ヶ月間、大阪出張が毎週ある。十年以上大阪に住んでいたので、決して知らない土地ではない。それでも、ここ数年はまるで別の街になってしまったと感じる。なじみの店が次々と姿を消し、その跡地にはドラッグストアが新しくできる。外国からの旅行客が…

野良犬の散歩は、においの地図を歩く。

犬と散歩に出かける。ユクの目は真剣そのものだ。あらゆる場所の匂いをかぎ、キョロキョロしながら、時に立ち止まり、後ろを振り返っては、何かを調べているような面持ちで歩く。それが毎日のことなのに、まるで生死をかけた一大事のようだ。そんなに懸命で…

犬と私の格好つけ合戦。

犬はリードを持つ人によって行動を変えるそうだ。ユクの振る舞いも、まさにそれを感じさせる。私がリードを持つとき、妻がリードを持つとき、それぞれにおいてユクの雰囲気は変わる。二人と一匹なのか、一人と一匹なのかによっても、その行動は変わるのだ。 …

犬の付き合いと大人の付き合い。

歳を重ねると、小学生の頃のように、利害を度外視した友だちをつくることが難しくなる。利害がある方が、むしろ付き合いやすい。仕事上の関係なら、新しく生まれることも多い。だが、「ただの友だち」は、なかなか出来ないものだ。 趣味を持つと、仕事とは無…

悪魔のささやき。

午後、どうにも抗いがたい眠気に襲われる。それをなんとかしようと、朝と昼の糖質を抑える生活を始めた。たしかに、眠くならない。けれど、その代償として、いつもお腹が減っている。口寂しさを紛らわせようと素揚げのミックスナッツを頬張るが、そんなもの…

海を前にして帰る犬。

週に一度、由比ヶ浜まで歩くというルーティンが続いている。夏の終わりとともにその習慣も途絶えるかと思いきや、そうでもない。きっちり週に一回、ユクは海の方へぐいぐい引っ張っていく。しかも、それが大体、土曜か日曜なのが不思議だ。曜日を理解してい…

うなぎ巻きするユクとうな重を巡る旅。

うなぎが食べたい。うな重が食べたくなる。 うなぎ巻きで座るユク坊。 定期的に——いや、数日おきにその衝動は腹の底から湧き上がってくる。まるで、ひどい宿酔いに苦しみながらもまた酒を口にしてしまう酒飲みのように(知らんけど)、うなぎが食べたいとい…

ハチを凝視する犬とカフェで一服。

風が冷たいと感じる瞬間が増えてきた。十月も半ばだというのに、まだ夏の名残がそこかしこに残っている。半袖のシャツで過ごす日も少なくない。そろそろ衣替えをしなければと思いながらも、季節の境目の曖昧さを楽しんでいる私もいる。 秋の気配とユク坊。 …

再会を期待する飼い主と通常運転の犬。

大阪出張から帰る日。たった一泊の出張で、そう長く離れていたわけではない。それでも、私はユクとの再会を心待ちにしている。しかし、ユクはそうでもない。これまでの経験からわかっている。飛び跳ねて駆け寄ってくるようなことはない犬だ。飛び跳ねて喜び…

腕を軽くして、秋を迎える。Apple Watchとユクの散歩。

Apple Watchをずっと身に着けているのは、健康管理のためだ。とはいえ、これまでそれが命を救ってくれたことはない。アップルのイベントを観ると、必ず「Apple Watchに命を救われました」という映像が流れる。あの布教動画を見ているうちに、私もお布施を払…

昼下がりの眠気とテクノロジーの環。

昼に眠たくなる。自宅で仕事をしているので、いつでも午睡は叶う。午後から眠たくなることを二十年くらい前から気にはしていた。お昼にお米を腹いっぱい食べるのをやめて蕎麦を食べるようにして改善したこともあった。この頃はお昼に蕎麦を食べても眠たくな…

ユクの「ワンちゃん芸」と「馬鹿ション」の顛末

捨てようと思っていたマットをリビングまで持ってきて置いていたら、犬がそれを気に入って捨てられなくなった話は以前に書いた。夜毎、この上で寝転がったり、へそ天をして見せたり、掘るような仕草をして熱心に前足で掻いたりするのだ。引っ掻く具合が心地…

ユクと暮らす日々に見つける、感情の輪郭。

人間が腹を立てることの多くが、他人をコントロールできなかったときに生ずる。自分はルールを守っているのに、他人が守っていない、などが多い。それが法律で定められている場合は社会に罰してもらえる可能性もある。そして、ルールに則ってコントロールで…

羽音に怯える日々とオニヤンマのお守り。

スズメバチの季節だ。夏の終わり頃から、活発な蜂の姿をよく見かけるようになった。ユクはスズメバチに尻尾の付け根を刺されたことがある。悲痛な声を上げて、しばらく苦しんだ。余程辛かったのだろう。今でも羽音に敏感で、聞くと尻尾を下げて、自分の後方…

秋の円覚寺、白鹿洞へユクとゆく。

朝の散歩が涼しい。一日に何度もシャワーを浴びたり、着替えたりする必要がなくなってうれしい。油断しているとすぐに冬になりそうなので、秋を全力で楽しむ所存だ。ユクも同じように思っているのか、いつものように浄智寺の参道を散歩したのち、さらに北鎌…

残暑の散歩、抱っこのぬくもり。

急に涼しくなった。秋を通りすぎて冬になってしまうのではないかと心配になるほど、風が冷たい。かと思えば、日中は陽も暖かく、汗が滲む。ツクツクホウシも粘り強く夏を主張している。 ちょっと秋っぽいショット。(ピンボケ) ユクの口も閉じていることが…

帰る場所、歌う場所、人間の居場所。

九月十五日をユクの誕生日と制定している。保護された犬につき、正確には分からないが、保護されたときの推定月齢から逆算されたものである。 かぶるといいことがある帽子。 その日、私は大阪にいた。お誕生日コールはしたが、ユクは電話やFaceTime越しでは…

始まらなかった三十円のゲームの悔しさを百円玉で晴らした日。

大阪に来ている。ユクはここにいない。今日のお話には犬は出てこない。 鎌倉で楽しくやってます。 明舞団地という名の団地で幼稚園生までを過ごした。めいまい、というのは、明石と舞子の間ということで名付けられたものだろう。こちらの近くにショッピング…

海を望む犬と夫婦の小さなルーティン。

六月くらいから、週に一回のペースで由比ヶ浜まで行っている。九月に入ったが、週一は続いている。もしかしてルーティン化したのだろうか。 もちろん、人間の都合で行き先を決めることがほとんどではあるが、ある程度ユクの意志も尊重している。どちらの方向…

捨てられないじゃないか。

物を買うことが豊かさである、という時代に育った。何かを集めるという趣味もその考え方に基づいている。 所有欲強めのユク坊。 レコードやコンパクトディスクを買い集め、カラフルでポップだから、という理由でPEZの容器を集めたりもした。それらの物を今は…

誕生月の一人と二匹に寄せて。

私もユクもカメリ(クサガメ)も九月が誕生月ということになっている。ユクとカメリは勝手に人間が定めた。ユクは保護されたときの推定月齢から逆算された。カメは家へ来た日なので、本当は春や夏に生まれたのかも知れない。 カメリ(クサガメ、オス、21才)…

浄智寺。暑い季節の朝の味方。

毎朝のように浄智寺の参道へお邪魔している。車もほとんど通らず、人も朝はまばらである。こちらの参道まで来れば、交通事故の危険が大きく軽減されるので、安心だ。ユクも心置きなくクン活に励むことができる。クン活がはかどるということは、そこに犬がよ…

海に行きまくった夏。

人生において、これほど海に行った夏はない。小田原では海まで歩いて五分の場所で暮らしていた。それでも砂浜に行くことは稀であった。台風が接近したときなどに高くなった波を見に行ったりはした。たまにバーベキューもした。だが、海に行くことが習慣とな…

円覚寺で盆おどり。

北鎌倉の円覚寺で、盆おどりが開催された。大きな門の周りに踊る人の円ができる。門の下では手本を見せる年季の入った方々が素晴らしい踊りを披露している。 櫓ではなく門のぐるりを。 円覚寺は犬を連れて入れる。本当にありがたい。何かのイベントごとでも…

異世界との交流。

私は幼い頃から外国人とのふれあいに興味があった。そのツールとしての英語にも大変興味があったので、幼稚園生のころは「英語の人になる」ことを夢として語っていた。しかし、生来のサボり心が邪魔をして、英語の人になることは断念された。それでもインター…

犬の爪切り、美的感覚。

野生で暮らしていれば自然と爪も削れるのだろうが、家の中で人間と暮らす犬たちは爪が不必要に伸びてしまう。これは人間も同じで、定期的に爪切りを用いて整える必要がある。私は、子どもの頃は爪切りが嫌いだった。爪を切ったあとの爪の先の感覚の変化が嫌…

ふるさとの訛なつかし砂浜の。

ユクは遺伝子検査を行った。ネットで申し込みが出来、キットを送り返すと検査してくれるサービスがある。それを行うと、どのような犬種の血が入っているか、遺伝的にどのような病気にかかりやすいか、なども分かる。と、偉そうに書いているが、私にはよく分…

夏休みの宿題は先延ばし派。

私に夏休みはない。二十年以上、自営でやっている。お盆休みもゴールデンウィークも特に関係ない。とは言うものの、お客さんは企業なので、お客さんは休む。相手が休んでいる間にこちらはせっせと手を動かしておく。手を動かしているあいだに電話やメールが…

北鎌倉の密度。

大阪、新大阪、新横浜と都会の駅を経由して鎌倉に帰ってきた。降りたのは、鎌倉の一つ手前、北鎌倉。 どこ行ってた? 夕方に着いたので、もう人もまばら。北鎌倉のお寺が午後四時から五時の間に一斉に閉門してしまうからである。また、今は夏休みで学生も少…