メッシがあまり好きではなかった。守備をしないし、ピッチの上ではほとんど歩いている。なぜ彼がここまでアルゼンチン国民やチームメイトに神様のように大事にされているのか、ずっと疑問に思っていた。きっと、これも年齢のせいだ。 中高生の頃は、フランス…
暑い外は、まるで温水プールのプールサイドのようだ。普通に歩いていても、前方からの緩やかな抵抗を感じる。呼吸も楽にできないような気がするほど、空気がたっぷりと水を含んでいて、とても重たい。 ベロリンチョ。 それでもユクは元気に駆け出す。そして…
歳を重ねるほどに、日常が愛おしくなる。五十代も半ばになると、なおさらにそう感じるようになった。経験したことが増えたからか、何か非日常的な「ハレ」を求めることに面白味を見出せなくなってしまったのだ。ハレにも限界があることを、何度も経験するこ…
梅雨はまだ明けていないと思われるが、突然暑くなった。夕方から出かけなければいけない場合、午後のお散歩時間は少し早めになる。午後4時にお散歩開始、というような感じだ。もしくは3時半スタートの時もある。 影が長くなる夕方。 幸いなことに、鎌倉には…
二階堂というエリアが鎌倉にはある。北鎌倉に住んでいた時も何度か訪れたことはあったが、引っ越してきてからは毎日の散歩コースとなった。地名は、頼朝さんが建立した永福寺にあった「二階堂」という名のお堂に由来する。 永福寺(跡)です。 引っ越してき…
犬は飼い主の気持ちを察する。「気持ち」というのは言い過ぎで、実際は高揚や落胆の気配を察知しているように感じる。落ち込んでソファーに座っていると近寄ってきて、ペロッとひと舐めして側で丸くなったりしてくれる。そんな時は、なんだかこちらの気持ち…
「張り切ってるわね」前方から歩いてこられた淑女に声をかけられた。もちろん、ユクの様子をご覧になってのことである。 張り切ってます。 鎌倉では多く存在する狭い歩道で前から来られる人とすれ違わなければならない。私は犬の速度や歩くコースをコントロ…
今年七歳になるユクにとっては、二度目のワールドカップである。2022年のワールドカップの時、すでにユクと暮らしていたのか、と考えると、流れる月日の速さを感じる。今回の日本代表チームもさらに成長していて、予選リーグ突破などは当たり前のことになっ…
ナンバープレートのお話ついでに、なぜ私が四桁の数字にこれほど注意を向けるようになったのか、その理由を明かしておきたい。 もうええでしょう。 それは小学生の時、通っていた塾の先生の言葉に遡る。当時はICカードで電車に乗る時代ではなかったので、…
車のナンバーを見るのが好きだ。そこにある語呂合わせを読み解く習慣がある。解いたところで何も良いことはないのだけど、語呂合わせに気づき、すっきりしたいのである。繰り返すが、本当に何も良いことはない。 たとえば「6832」や「32」はローバーミニやB…
梅雨らしく曇天が続いた。もちろんしっかり雨の降る日もあり、ユクをあまり遠くに連れて行くことができない。ドロドロになるので山の中にも入っていけないし、川は増水していて流れが早い。それでもユクは際まで行って流れを確認する。川や橋をとても怖がる…
引っ越してきてもユクがお留守番を上手にできるので、久しぶりに夜の食事に出かけた。以前住んでいた家の近所にあるレストランである。 留守番かぁ。 店主に引っ越したことを告げると、「最近、お会いしないな、と思っていました」と言われた。朝の散歩の時…
越してきてから、三ヶ月の時が経った。少しずつ、少しずつ、散歩の感覚を掴み始めている。散歩の感覚というのは、どの道を通るかというルートのことでもあり、どのくらいかかるのかという所要時間のことでもある。その両面から、感覚を掴んできている。 そろ…
ユクは毎日毎日、北鎌倉へ向かおうとする。行くと二時間から三時間はかかる。毎日は付き合ってられないので、最低でも二週間に一度くらいは連れて行ってやることにしている。 北鎌倉の方角は正確にわかるユク坊。 散歩中のおやつも、楽しみのうちの一つだ。…
小学校に上がる前くらいの男の子が、何者かと戦っている。もちろん、その相手は私には見えない。だが、確かに男の子は何者かと戦っている。男の子の手には、武器もない。素手で戦っているのか、何かを持って戦っているのか、それも分からない。 戦う準備はで…
犬は永遠の三歳児、とよく言われる。三歳児は二歳児より少し賢い。二歳児は言っても聞かないが、三歳児は「これは駄目だよ」と言えば理解するようにになってくる年齢だ。そう考えると、犬が三歳児程度というのは少し言い過ぎだとは思うが、存外外れてもいな…
ユクが水を嫌いなことは何度も書いた。海へ行くことは大好きだが、海には決して入らない。波打ち際五メートル前までが限界である。砂浜に着くとすぐに伏せをして、空中の匂いを嗅ぎ始める。その匂いが好きなのだろうか、それとも犬たちの匂いを探しているの…
暖かくなってきた。散歩で少しの坂を駆け上がるだけで息が上がってくる。暑さのせいだろう。ユクの口も開いている。ユクは口を閉じていても口角が上がっているので、なんだか笑顔のように見える。別に笑っているわけではないとは思うが、にっこりしているよ…
高校生の頃、仲良くしている近所の犬がいた。その犬は友人の家にいた犬だった。祖父の家にも犬はいたが、長く一緒にいたという点においては、その友人の家の犬が最も長かった。名前はポチといった。 スタンダード過ぎない? 犬が寂しい時に出す「ピーピー」…
自分がどれくらい老けているかなど、毎日自分の顔を見ているから分からないものだ。しかし自分の顔でも、昔の写真などを見ると随分と老けたものだと思うことがある。他人なら、もっとそういうことが起きる。久しぶりに出会った人がすっかり痩せていたり、随…
人類は常に進化してきた。今でも日々を良くしよう、便利にしようと、小さくても工夫を続けているのは人間の性と言えよう。その日々の積み重ねが、振り返ってみれば、大きく人類を進化させている。最近の子供たちはとても豊かに見える。昭和の小学生は、夏で…
ユクは病院が嫌いだ。診察台の上に載ることを大変嫌がる。勝手な想像だが、保護されて去勢の手術を受けた時のことがトラウマとなっているのではないか。散歩のあとのブラッシングなどは気持ちよさそうにしているし、雨散歩のあとのドライヤーだって、最初こ…
レトロゲーム大会がまた開催された。五回は行っていないと思うが、二回ではない。もしかしたら、そろそろ五回目だったのかもしれない。今回は柔術仲間がもう一人加わった。私より少し年下だが、同世代と言える年齢の方だ。つまり全員がファミコン世代という…
今日は一年に一度の特別な日だ。誕生日ではない。ユクが初めて家に来た記念日だ。六年になる。六年は長い。小学校に入学した子が中学生になるくらい長い。しかし体感はあっという間だ。毎日同じように散歩をしているからか、時の流れが早く感じられる。だか…
ユクは山道が好きだ。山の中に入ると目に野生の火が灯る。リードの引きも強くなる。このところ、元住んでいた北鎌倉へ行きたがることが多い。北鎌倉に向かっている時は、さらに引きが強くなる。その背中には固い意志が見える。 意志のある背中。 二階堂や東…
家が片付かないが、ユクは新しい土地と家に慣れてきた。本当にそれが嬉しい。人間はどうにかなるが、犬が新しい環境に馴染むかどうかを心配していたからだ。不思議なことに、リビングと寝室の位置が変わっても、お風呂や台所の配置が変わっても、その役割と…
北鎌倉から鎌倉まで、山の方を通って抜ける道がある。「天園ハイキングコース」という名前が付いている。ユクがまだうちに来ていない時に、夫婦で歩いたことがある。その後、台風で通行ができなくなったりしていたので、ユクとは端から端まで(建長寺半蔵坊…
散歩中、コーギーを連れたマダムとお話しする機会があった。初めてお会いする犬と飼い主さんだった。 初対面が難しくなってきたユク坊。 ユクは、コーギーの友達もいるにはいるけれど、初対面だと難しいだろうなと思っていた。案の定、よそ見をして接触を回…
習慣とは何だろうか。同じことをすることで、生活にリズムを生み出すことができる。ある意味、同じことをしようとする姿勢は、「どの瞬間も同じではない」ということを明確にする。無常であり、一期一会なのだ。だから習慣化は、無常を知ることであるし、習…
永福寺を「えいふくじ」と読んでいた。本当は「ようふくじ」と読むそうだ。その地域では当たり前の読み方でも、他所からやってきた者にとっては難しいことがよくあるものだ。 ここに「二階堂」が建っていたらしいよ。 大阪では本町を「ほんまち」と読む。堺…