犬と人は、最低でも一万五千年は共に暮らしてきたそうだ。もしかしたら、もっと前からかもしれない。正確な年数は、何万何千という単位になっている時点で、この際あまり関係がない。とても長い年月を、人と犬は寄り添い合って過ごしてきた、ということは間…

ユクは足の運びが独特だ。野良犬時代の古傷、左の後ろ脚に骨折をした形跡がある。よく見ると脚や身体は曲がっているし、左の太もも辺りの筋肉もあまり使えていないのか、発達していない。うちへ来た頃は、長く歩くこともままならず、どうなるものか、と案じ…

若者は大体正しい。そのように考えるようにしている。人類の進化に必要なことだと思われるからだ。本音を申しあげれば、歩きながらスマホを見ていたり、家族と食事をしているのにゲーム画面を見ていたり、重要な報告をLINEで済ませたり、イヤホンをしたまま…

茶の湯に関わっていると、年末年始がずっと忙しい。風炉から炉に変わる十一月に炉開きというものを行うが、これは「茶人の正月」と呼ばれている。十一月からすでにお正月が始まったような気持ちになる。十二月には正月への備えを始める意味で、事始めという…

四国に住む父親に会いに行った。田舎は個人に割り当てられている面積が、どこに行っても広い。つまり、人口密度が低いということだ。自動車も余裕をもって走ることができる。いや、昔ながらの田んぼ横の農道などは狭いし、夜は暗いので、通る道による。が、…

少なくとも二年は乗っていなかったか。とても久しぶりに飛行機に乗った。大阪から搭乗した。パンデミックを抜ける小さな穴が見つかったような空気が世の中に流れてきた。空港へと向かうモノレールの中でも大きなスーツケースを転がしたご婦人二人が賑やかに…

過日。三泊四日の出張で、しばらく家を空けた。ユクと三日離れるのは初めてだったかもしれない。ひょっとしたら、帰宅したときには飛び跳ねて再会の喜びを表現してくれるのではなかろうか、と考えた。 四日間の犬の世話すべてを妻にお願いした。世話は大変だ…

国の要請で、県をまたいだ移動をしないでください、とのことだったので、この二年間、毎年行く初詣やお墓参りなどを自粛してきた。このまま神社やお墓参りに行かない人間になるのも嫌なので、そろそろ行きたいな、と考えていた。非常事態宣言も解かれている…

前回の文章をアップしたのち、それを読んだ妻から「まるで家庭がうまく行っていない人が書いているようだ」とお叱りを受けた。 私としては、孤独を感じやすい無駄な飲み会や謎の集まりがこの時勢のため減少し、孤独を感じる機会も無くなり、おめでたい、くら…

ユクは散歩の帰り道、よく振り返る。おそらく友達の犬を探しているのだろう。そのように見える。あまり知っている犬に会えなかった日は、少し不完全燃焼の様子だ。寂しいな、と感じているようにも見える。しかし、犬は「孤独だな」とは感じていないと思う。…

波乗りをする人たちにとって、波の状態は常に、とても気になるものだそうだ。アプリや定点カメラなどの情報とにらめっこ。波乗りに出かけるタイミングを見計らっている。私は（色々な意味で）波に乗ることがないので、そのようなそわそわとした状態を経験し…