ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

ついてきちゃった犬。可愛い身勝手。

ユクが人間なら、あまり友達にはなりたくない。大変身勝手だからだ。これまでに何度もワンプロをして遊んでもらっていたお友達の犬に対して、急に冷たい態度を示し、俺そういう遊びは卒業したから、というような顔をすることがある。見ているこちらの腰が砕ける。

あ、大丈夫です。

数時間お留守番をした後、感動の再会がやってくるかと思いきや、ああお前か、帰ってきたのか、とふかふかベッドに横たわったまま、目線だけでご挨拶をする。世の中にはどこにでも着いてくる犬や、束の間離れていても、飛び跳ねて再会を喜ぶ犬もいるというのに。毎回、感動の再会をするのも大変だし大袈裟であるから、それはそれで良いのだが、もう少し愛想があってもバチは当たらない。

おかえりなさいませ。

いただいた時に貪るように食べていたおやつに突然見向きもしなくなることがある。おやつをくださる方に、「すみません、マイペースな奴で」と飼い主の私が頭を下げる。「マイペース」という言葉はとても便利だ。実際は、身勝手や我儘という言葉で表現されて然るべきであるが、それでは犬であるユクが可哀想だから、少し語気を和らげるために、マイペースという言葉を使っている。

あ、今それどころじゃないので。

ユクはお留守番が上手にできる。無論、犬はやりたくてやっている訳ではないだろうから、「上手」というのは完全に人間側の勝手な価値観である。悪戯や粗相をしない、という人間の利益に焦点を当てて言っているまでだ。私が二階で仕事をしている間も、一階でおとなしく過ごしてくれている。お前も独り上手なのだな、と思うこともあるが、これも人間側の価値観であることは言うまでもない。

ちゃんと仕事しているのか見張りに来たのだ。

ある日の昼休み。いつものように一階で、しばしユクと過ごしていたときのこと。
ゴロゴロと雷が鳴った。ユクはハッとして窓の外の様子を伺っていた。臆病な性格ではあるが、雷でどこかに隠れてしまうほどにはならない。少し耳が後ろへ倒れてしまう程度である。雷の鳴るなか、午後からの仕事を始めるため、私は二階へと向かった。階段を上がりはじめると後ろからトコトコとユクがついてくる。普段はついて回ったりしないユクがついてきて、私の机の横で丸くなった。

こういう身勝手さに振り回されている。