かもしれない運転。という言葉をご存知だろうか。現在でも使われているのかどうか知らないが、私が免許証を取得した一九九〇年代初頭には、教習所でやたらとこれを言われた。あの角から子供が飛び出してくる「かもしれない」。前の自転車がふらついて内側へ…
朝からユクが上目遣いである。このような表情をするときは、私たちがお出掛けしそうな雰囲気を醸し出しているときや何かもっと食べたいというときだ。ワンワン!と寄ってきて訴えるようなことをユクはしない。花咲か爺さんが飼っていたポチのようにここ掘れ…
今は寝坊助の私でも小学生の頃はとても早く起きた。日曜日には、早く起きすぎてドラえもんの放送が始まる時刻まで時間を持て余した。両親は大人で仕事のない日なので、まだ寝ている。もっと幼い頃はおそらく起こしに行ったりしていたのかもしれないが、小学…
ユクは要求吠えをしない。家へ来た当初は吠えることがしばらくなかったので、吠えられない犬なのではないか、とすら思っていた。 ある日私が二階にいたとき、下から犬の吠える声が聞こえてきたので、下りてみるとユクがおっさんのようなドスの利いた声で吠え…
「おにやんま君」という商品をご存知だろうか。昨今のアウトドアブームで、注目されるようになった商品らしい。なんでも帽子などに付けておくと、蚊よけ蜂よけになるという。それはそのままトンボのバッヂであるので、その効用をご存知ない方からすれば、何…
お散歩に出掛けると、周辺にお住まいの犬たちと出会う。三年間をかけて、ユクが関係を作り上げてきた、近所の犬仲間たちだ。 片思いのお相手へのアプローチが下手なユク坊。 互いに空気のようにそこにいるだけ、という関係の犬もいれば、ユクが一方的に好き…
先日購入したアコースティックギターは中古だ。どこのどなたが使っていたのかは聞いていない。 茶の湯の道具は価値の高い物ほど、由緒が明確なことが多い。何代のお家元の箱書きがあり、誰それの手にわたり、その後誰それにより、というふうな感じで物語られ…
いま、野球が特別好きなわけではない。それでも高校野球がテレビで流れている状況が好きだ。小学生の頃は、春も夏も毎日高校野球を観ていた。有名な高校の校歌を一緒に歌ったりもした。中学生や高校生になった頃には、自分がこの緊迫した場面で打席に立った…
私は優良ドライバーだ。なんのことはない、日常的に運転をしていないだけだ。運転をめったにしない人間にゴールド免許を持たせて、優良ドライバー呼ばわりするのは、現実に即しておらずおかしな感じがする。優良ドライバーというよりは優良免許証保持者であ…
ギターを買った。アコースティックギターという代物だ。十代の頃からエレキギターを弾いてきた。アコースティックギターも何本か持ってはいたが、あまり興味がなかった。大体、弦は太いし、指は痛くなるし、エフェクターでドッカーンと音量を変えることがで…
マウントを取る、という言葉を聞くようになった。ブラジリアン柔術をやっている身としては日常的な言葉であり、マウントを取れば四点が入る。日本語なら「馬乗り」の状態ことである。マットの上では日常的でも、普通の生活においては滅多にない状況だ。一生…
あれから随分経つが、ユクはあの痛みを忘れられないようだ。スズメバチに刺されたのは尻尾の付け根の部分で、ピンと立ったユクの尻尾を後ろから見たところだ。まだ傷跡も残っているし、痛々しい。さらにはこの心の傷も問題だ。 尻尾に何かが触れたのか、歩い…
妻はユクに甘い。ユクはそれを知っている。妻に対してわがままやお利口であることを示す行動をして、おやつをせしめている。散歩に行きたいくせに、行きたくないふりをしてみたりもする。妻が言うには、その場に私が居ると、余計にわがままになるそうだ。何…
ため息ばかりをついていると、負のオーラに包まれるような気がする。実際そのようなことを信じて、ため息を意識的に排除してきた。幸せも不幸せもすべては相対的なものだ。どのような状況にあろうとも、もっと不幸な人が居て、それに比べれば自分なんて幸せ…
コロナウイルスに感染した。言うまでもなく、人間の話だ。今年の二月くらいから、マスクもほとんどしなくなり、すっかりコロナのことなんて忘れかけていた。ブラジリアン柔術という人と密着する格闘技をやっていることもあり、いわゆる感染対策というものに…
ユクがスズメバチに刺されたことは前に書いた。お散歩に出掛けてすぐ、家のそばで刺された。悲痛な声をあげて、しばらく情けない表情と格好をしていた。病院に連れて行く車中でも悲しい声を出していたほどだ。私はスズメバチにも普通の蜂にも刺されたことが…
茶の湯の点前を稽古する。点前を最初から最後まで出来るようになるためには、ある程度の日数がかかる。まずは場面を切り取って稽古する。これを割稽古という。袱紗を捌いて棗を浄める。この場面だけを「割って」稽古するのだ。 やがて、薄茶を点てたり、濃茶…
ユクは家へ来たときから右脚が良くない。それは野良犬時代に骨折した古傷なのだと思われる。リードを思いっきり引っ張るときも、明らかに上半身、つまり前脚の力を主に使っていることが見て取れる。上半身だけを鍛えてしまった歪なマッチョトレーニーのよう…
まず初めに。飼い犬が蜂に刺されてしまって、どうしようか、という状態でこのページを見ている方は、いますぐにグーグルマップを立ち上げ、近所で営業している動物病院を探し、獣医師に診てもらうことを強くお勧めします。 急げ! 三連休最後の朝。妻がユク…
うちの家は、多くのことが「ユクファースト」となっている。犬と暮らしておられる皆さんは全員きっとそのような感じなのではないか。そうあって欲しい。相当甘やかされているにも関わらず、当たり前である、という顔をして鎮座しているユク坊。愛犬家の皆様…
梅雨明け宣言がまだ聞こえて来ない七月の半ば。暑さが本格化、というより超越化という感じのものになってきた。天気予報の地図は真っ赤を通り越して、紫色になっている。真っ赤のほうが暑そうで、紫色だと少し寒色が混ざって冷めてきた感じがする。初めに設…
神戸、大阪、小田原、鎌倉。私の暮らしてきた地域は、いずれも観光地だ。ここ北鎌倉は、年中というわけではない。六月の紫陽花の季節のみ、線路端の道が観光客でごった返す。パンデミックも明け、これからもっと海外からの観光客が増えていくと、鎌倉の辺り…
北鎌倉が一年で一番賑わう季節、六月が終わった。犬と一緒に来られる観光客もあるので、ユクのパトロール(クン活)も忙しかった。知らない匂いが沢山残っていたのだろう。六月は日が長い。日の入りが七時くらいなので、お寺さんが閉まる五時くらいから出て…
「ハチ公物語」と「南極物語」を若い時に観た。大人も子供も泣いてしまう作品である。私もきっと涙したと思う。「犬と私の10の約束」という映画も観たことがある。これも犬が死んでしまうので悲しい。観た当時は犬と暮らしていなかった。それでも充分に悲し…
空港での手荷物検査場が苦手だ。何度も経験することによって、少しは慣れた。それでも、ちょっと嫌だな、という感覚は変わらない。何も悪いことはしていないし、持ち込んではいけないものを所持していない。「誰かに荷物を手渡された」こともない。それでも…
レスキュードッグと言えば、駅前で犬と一緒に募金しているイメージがある。災害救助犬とはまた違うものだろうか。いや、盲導犬だったろうか。うろ覚えである。少しGoogleで検索をしてみたが、微妙に名称が違う協会がいろいろ検索結果に出てきて、くらくらし…
世の中すっかり変わった。いつの時代も変化を目の当たりにし、老いとともに嘆息を繰り返してきたのが人類の歴史というものだろう。その歴史を俯瞰して見ても、ここ百年ほどの進化の速度は凄まじい。インターネットが庶民にも使えるものになってから三十年く…
過去を悔やむ。未来を心配する。人間の話だ。犬は過去を悔やんだりしないし、未来の心配で心を痛めたりもしない。むしろ、それらの概念そのものがないのだろう。時間の概念すらないと言ってよい。時間がないから走る、ということはなくて、早く行きたいから…
父の住む愛媛に帰省している。私は愛媛で生まれ育ったわけではない。だから帰省という言葉はしっくりと来ない。故郷というわけではないが、父のところに行くことを、いったい何と表現すれば良いのだろう。 みきゃん愛。 司馬遼太郎が書いていたと記憶してい…
北鎌倉にはパンツ一丁でランニングをしている外国人男性がいらっしゃる。度々見かけるのだが、どのあたりにお住まいなのかは分からない。目撃情報は、結構耳にする。やはり北鎌倉界隈の住民にとっては有名な方なのだろう。 登り口にも下り口にもこの看板が。…