鹿柄をまとった犬なので、名を「ユク」と付けられた。「ユク」はアイヌ語で鹿の意である。
細かいことを言えば、鹿柄は茶色ベースに白の斑点だ。ユクの場合は茶白の犬ではあるが、白ベースに茶色の斑点が入っている。「バンビちゃん」とは配色が逆なのだ。それでも、鹿っぽいと言えば鹿っぽい。名の由来をよその人に説明しても、ああなるほど、ということになる。
ユクが家に居るとき、一日に何度も見せる「ヘソ天」は、腹を天井に向けて仰向けになるポーズのことだ。腹を見せるのは降参を意味しているもの、と犬を飼うまでは思い込んでいたが、そればかりでもないらしい。
どちらかというと甘えているという状態に近いように思われる。ヘソ天しながらも、視線を送ってくるし、その行動は、そばに来て欲しいとお誘いしているように感じられる。
ヘソ天をしているユクのお腹は、夏の間は特に毛が少ない。だから地肌がよく見える。その地肌も鹿柄かといえばそうではない。牛柄なのだ。
もしかして、牛柄と呼んでいる模様は、牛以外の動物にも存在するものなのだろうか。少なくとも犬には存在している。シャンプーをするとき、水をかぶったユクの身体は体毛の向こうに牛柄が見えるようになる。
鹿、鹿と思っていたけれど、牛じゃねぇか。
アイヌ語で牛は「うし」だそうだ。
やっぱり「ユク」がいいな。