犬と行く、冬の散歩コースには山がよく選ばれる。夏場にもユクは山の方へ行きたがるので、選んでいるのは人間である。午後のお散歩は、特に犬にとっての一大イベントであるので、なるべくユクの行きたいところへ行かせてやりたいと考えているし、クン活にもできる限り付き合ってやりたい。
飼い主の言う事を聞かなくなっては困るので、私の意思は絶対なのだ、ということをたまに分からせる必要がある。仕方ねぇな、という顔でついてくる犬は、飼い主の言う事が絶対だ、などとは思っていないように見える。単なる人間の気休めかもしれないが、そうやって、こちらの意思を強く示すことをやっている。二割程度だろうか。
行きたい方向へ行かせている、と言っても、実はコースは決まっていて、ユクはいずれかのコースを行く。奇をてらった道を選ばない。山道を歩いていると、行ったことのない道に行き当たることがある。ユクは自信ありげにそちらに向かおうとするが、人間はめったに冒険しない。駄目だよ、と言って、いつもの道を歩く。
あの道を進めばどこに行ったのだろう。
道がある、ということは人間がそこを利用しているわけで、勇気を出して進んでみれば、いつもの知った道に出ることもよくある。なんだ、ここに出るのか、という感じ。
冬の山道は日が暮れるのも早い。
人間だけで歩くのは少し怖いかもしれない。
ユクを連れていれば、まったく怖くない。
不思議だ。
ユクとゆく、なら、山も平気だ。