犬は飼われている家の人それぞれに態度を変える。
そのことは犬を飼う前から、何となくは知っていた。ユクがうちへ来てからしばらくは、態度の違いなど気が付かなかった。
一緒に暮らし始めて、半年過ぎた頃だろうか、ユクの態度が妻に対してと私に対してとで違うことに気付き始めた。
妻に対して、ユクはわがままだ。妻と散歩に出掛けると、帰りたくない、と広場で駄々をこねる。散歩の準備のときも、少し渋る。妻に対しては、少しわがままを通したいように見える。
持って来い遊びなんかも妻と遊ぶときは、少し偉そうだ。どうせ食べ物を妻からもらうのだから、自分のほうが優位である、などと示しているとも思えない。何故偉そうにするのか。
妻はユクに対して優しいので、そこを見透かしているのだろう。私はユクに対して、大変厳しい。それでも散歩に出掛けたときは、あまり聞く耳を持たなくなる。ここをもう少し何とかしたいのだが、匂いを嗅いでいるときのユクは集中し過ぎて、何も聞かなくなってしまう。
最近、妙なことに気が付いた。
ユクが、座っている人間の股に入ってきて丸くなる状態を我が家では「ぬくぬくポジション」と呼んでいる。ユクに「ぬくぬくしようよ」と声をかけると、特に冬場は座っている人間の股の間にやってくる。
このぬくぬくポジションにやってくるときの話だ。
妻とぬくぬくするときのユクは、必ず自分の玩具を探し、咥えて持ち込むらしい。玩具とは、お肉やエビフライのぬいぐるみ類である。
私とぬくぬくするときには、これらの物を持ってくることをしない。
この態度の違い、一体何なのだろう。