ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

好きな子へのアプローチが下手な犬。

ユクは片想いであることが多い。
仲良くイチャイチャしているところを見たことがない。そもそも犬がイチャイチャすることもないのかも知れないが、何となくうまく行っていない感じがする。
お前はどうなんだと言われれば、偉そうに他人のことをとやかく言えるほどのものでもない。

行ってしまった好きな子をいつまでも見送るユク坊。

小学生のときのバレンタインデーのこと。机の中に、何と手紙が入っていた。誰にも気づかれぬよう、隙を見てランドセルにさっとしまった。
いそいそと家に帰り、手紙を取り出して開けてみた。そこには変なイラストが描かれており、また汚い字で、「大好きよ〜」と書いてあった。私は青ざめた。クラスメイトによるいたずらだ。きっと、奴らは私がそっとランドセルにしまい込む所を笑いながら見ていたに違いない。

そりゃけっさく!

中学高校は男子校に行き、さらに恋愛をするような環境になく、ゲームセンターに通っているばかりだった。

何事も傍から見ていると、こうすれば良いのに、などとよく気づくものだ。他人のことなら、なおさらである。ところが、自分のことになると途端に判断力が鈍る。

茶の湯もそうだ。点前座に座った途端、分からなくなる。

ユクの様子を見ていると、ああ不器用な奴め、と思う。好きな犬の後方から近づき、匂いを嗅ごうとしたところ、相手の犬に嫌がられたときなど、ああ、こちらの草の匂いが気になっただけなのですよ、という振りをしてごまかしている。情けない。いや、でもそんなものだよな、分かるぞユク坊。

そんなところは飼い主に似なくても良いものだが、不思議なものだ。

傷を舐め合う俺たち。