ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

ええおべべ着てはりますなぁ。

京都の人は発している言葉と腹の中で考えていることが違うそうだ。昔一緒に働いていた京都出身の実直な若者が嘆いていたことがある。「ぼく、まったく言葉の裏を読めない人間なので、京都での生活は大変でした!」と。大阪に出てきて良かったね、と言った。大阪の人間は何でも明け透けに言う。そこに面白味もふりかける。まあ、それもまた面倒だと言えばそういうことになるが。

んなあほな!ズッコケ!

ぶぶ漬けどうどす?」
京都人のお家へ訪問中、このように言われたら、「はよ帰りなはれ」という意味だ。この場合、「おおきに、いやまた今度。そろそろおいとまさしていただきま」と返事するのが正解だ。「ええ、ほなよばれてまいりま」などと返事して、ぶぶ漬けを用意させてしまっては、まったくマナーのなっていないお人、というレッテルを貼られてしまうだろう。一応言っておくとぶぶ漬けとは、お茶漬けのことだ。

おいとましません。

「ええおべべ着てはりますなぁ」にも注意が必要だそうだ。京都人にそう言われたなら、「おかめちゃんが着物だけ派手なもん着て」という意味だとか。背筋も凍る話だ。

うーん、むつかしすぎる。

うちの犬もええおべべを着させてもらっている。鎌倉では褒められたなら、文字通り受け取ってよいのではないだろうか。
「ユクちゃん、格好良いね」と散歩中によく言われる。
洋服選びは、百パーセント妻のセンスだ。私はほとんど関与していない。自分のところの犬ながら、なかなか格好良いと思っている。

ユクに「うわぁ、ユク、格好良いね〜!」と大げさに言うと、ユクもまんざらでもない表情をしている。

この冬は、新しいダウンコートを買ってもらっていた。ユクの体型ではサイズ選びが難しい。この新しいコートを最初に着せていった散歩のあと、妻が「おしっこがお腹の部分にかかってしまった」と言った。長さはちょうど良いのだが、お腹の部分の布が余っていたのだ。

まんざらでもない。

さっそく妻の手直しが入った。
胴回りを調整できるように新しくボタンが付けられた。いつの間にこんな器用に裁縫ができるようになっていたのだろうか。犬への愛が感じられる。

お腹周りがすっきりしました。

甲斐あって、ユクにぴったりのダウンコートが仕上がった。
良かったな、ユク坊。「ええおべべ」に負けないくらい、格好良いぞ。