ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

父から受け継いだ呪文。

空気が乾燥している。私の肌もからっからだ。 ニベアメン クリーム 75g 男性用 クリーム ニベアメン Amazon ハンドクリームなど使ってこなかったのだが、五十歳を過ぎたあたりから必要を感じて使い始めた。ちょっと気取ったハーブ配合のようなものを使ってい…

忘れる人間と、覚える犬。

物の名前が出てこない。人間の話だ。 なるべく「あれ」とは言いたくないので、沈黙となってしまう。沈黙が長引く。名前は出てこない。相手に状況を説明して、それが何であるかを逆に尋ねる体裁となる。連想ゲームだ。大抵は相手が名前を言い当ててくれて、事…

犬の時間と永久を思うとき。

古い道具ばかりを使っているからといって、すべてが古臭いというわけではない。茶の湯の話である。 鎌倉で楽しくやっているユク坊。 初釜という、年明け最初の茶会があった。私は半東の役を務めた。お点前を披露する役ではなく、その横で挨拶をしたり、道具…

祈り亀と、遠くの犬。

先生宅の初釜のお手伝いがあり、大阪にいる。事前にいただいた道具組の一覧(文字ではあるが)を眺めながら、江戸時代に思いを馳せている。 新石切にある細いビル。 大阪は「えべっさん」ムードだ。「商売繁昌で笹もってこい!」という掛け声とともに、チキ…

ユクと歩くには、今しかなかった。

いつかしよう、ということをやめなければいけないな、と思う。もっと良くないのは、「仕事を引退したら」とか、「暇ができたら」と条件を付けることだ。やりたいことは、忙しくても思いついたときに取り組むべきなのだろう。 「いつでも」おやつをもらおう。…

紅白のあと、静かな散歩。

大晦日には紅白歌合戦を観た。ここ数年、観ている。 高校生になったら夜中に友達と外を歩きたい。大晦日は、ほっつき歩くための最高の理由ができる。だから、夕方から出かけて行って、須磨の海岸で初日の出を見るため、歩いて浜まで行った。お金がなくて、暇…

大晦日の山散歩。未来は静かにやってくる。

二十四世紀のドラマを観ている。こんな感じの未来になれば良いな、と思う。そこでは、病気も不幸も克服した人類が描かれている。 現実は二十一世紀である。年号は二〇二五年だ。今日は大晦日なので、明日は二〇二六年になる。二〇二六、なんと未来的な響きだ…

犬へと引き継がれたクリスマスの物欲。

サンタクロースの存在を、小学生の頃までは信じていた。プレゼントを持ってきてくれる赤い服を着たおじさんのことだ。十歳の子どもは純粋なのか、阿呆なのか。それとも時代の問題で、今の子どもたちはもっと現実的で、サンタクロースが架空の存在であるとい…

私はスポック。ユク艦長と私。

ウェブ制作において、一緒に仕事をしている方の影響でSF作品を読むようになったということは前に書いた。彼は「スタートレック」シリーズのファンでもある。私もそれを知り、シリーズを観ようと何度か挑戦したが、いかんせん映像が古く、世界に入っていけな…

犬とヤモリと午睡する。

初めてではないが、よく見かける、というほどでもない。ヤモリが家に現れた。 ん? 大抵は外で見かけることのほうが多い。家の中で見かけると、やはりギョッとする。が、大人しいし、動きが気持ち悪くはない。というより、停止している印象である。突然飛ん…

老害への距離。

人間、齢五十を超えれば――いや、四十くらいからかもしれないが――いわゆる「老害」と呼ばれる存在にならないよう、気をつけたいものだ。北鎌倉駅の周辺には踏切が多い。先日、遮断機が下りているにもかかわらず、それをくぐって線路を渡ってしまう爺さんを見…

静かに待つという才能。自慢してもいいかい?

ご近所さんの犬の飼い主さんのお話を聞いた。お留守番ができない、とのことだった。ユクが当たり前にお留守番をしてくれるので、すっかり苦手な犬がいることを忘れていた。自分だって、はじめてユクを留守番させるときには恐る恐るだったし、色々と考えてい…

忘年会のあとに見た夢、犬の温もり

師走になり、パンデミックの余韻もようやく薄れてきたからか、忘年会がぽつぽつと開かれるようになった。とはいえ、かつてのような「大忘年会」という雰囲気ではない。三人、四人、多くても十人程度。私が今年参加したのは、そのくらいの規模の集まりばかり…

小春日和な由比ヶ浜。

山歩きの季節になったので、毎週のように行っていた砂浜はしばらくご無沙汰だった。数日前からユクが海方面に行きたがっていることを夫婦で共有していた。人間の都合もあるので、日曜日に早めに出て海へ行こう、ということを決めていた。ユクはそんなことが…

犬種は何ですか?

ユクの犬種は「フォルモサンマウンテンドッグ」という名称だ。遺伝子検査の結果、ユクはフォルモサンマウンテンドッグが 100 パーセントであることが分かった。お父さんもお母さんも、純然たるフォルモサンマウンテンドッグなのだ。 すれ違いざま、おじさん…

でーじねぇっすか?

齢五十にして犬を飼い始めた。 おぬし案外ジジイだな。 正確には四十代だったが、まあこの際どうでも良い。むしろ、この年齢で犬と出会えたことをつくづく幸運だったと思う。もっと年を重ねてからでは、これほど犬との散歩につきあう体力も気力もなかったか…

新しく発見した、ユクの法則。

ユクは人間に対して懐いていかない。野良犬っぽい性格、とでも言おうか。人間に対して警戒心を持っているのだと思われる。 おうちではこんな感じなんだけどね。 いつも散歩で会うし、おやつももらうくせに、撫でさせはしない。そのような指針で行動している…

未来世紀過ぎる。

二〇二五年も終わろうとしている。気がつけば、年が明ければ二〇二六年だ。「二〇二六」という数字の響きは、どうにも漫画じみている。ドラえもんの未来都市、バック・トゥ・ザ・フューチャーの空飛ぶスケボー。ああいうものを、私はずっと「未来」と定めて…

冬を急ぐ風と、遅れてきた紅葉。

今年の長い猛暑と、突然訪れた冷え込みのせいで、秋という季節はすっ飛ばされてしまったのではないかと思っていた。だが、ここに来て北鎌倉の紅葉は見事に色づき、むしろ一気に凝縮された濃厚な秋を楽しませてくれている。 浄智寺の銀杏とユク坊。 円覚寺の…

変わる味、変わらない道。

大阪出張の折、気に入っているピザ専門店に足を運ぶ。毎年毎年この店を訪れ、毎年毎年、チーズがたっぷりのったピザを食べる。今年も六種のチーズがのった贅沢なピザを選んだ。ところが――口に入れた瞬間、何かが違う。いや、味そのものは変わっていないのか…

山の静かな時間を、ユクとゆく。

山を歩くのが好きだ。多分、犬も飼い主もそうだ。平日の山は人影が少なく、もちろん車も通らない。静けさの中で、自分たちだけが小さな小さな生き物として、道の上に存在しているような気持ちになる。ユクはといえば、あっちへクンクン、こっちへクンクンと…

ヤギミルクを切らした数日の話。

朝、ユクにホットヤギミルクを作ってやる。犬になるべく水を飲ませたいのだが、ただ「水を飲め」と言っても飲まない。だからある意味それは、少しでも色や味がついていれば飲むだろうという、人間の魂胆が詰まった飲み物なのだ。ユクはこのヤギミルクが好き…

スーツケースよりユク。

相変わらず、毎週出張の日々である。大学で学生たちに向かって熱く(るしく?)語りかけている。毎年、せっかくの縁であるからと思い、他人様の子ではあるが、本当に幸せな人生を送ってもらいたいと願って対峙している。もちろん、単位だけが目当ての者も多…

野良にも衣装。

ユクは保護された犬である。どのような状態で保護されたのか、くわしいことは分からない。ただ、お母さん犬と一緒に、あるいは兄弟たちと一緒に、というわけではなかったらしい。一匹で歩いていたのだろうか。群れからはぐれて迷子になっていたのだろうか。…

待つ犬の姿。

じっと待っている。一応、犬の話だ。 これはおやつ待ち。 朝、トーストなどを食べていると、食べ終わりそうな頃を見計らって、ユクが膝もとにやって来てお座りをする。視線は人間の手に注がれ、あるいはその先――机の上に置かれる、こんがりとバターが溶けた…

変わる街と変わらない山。

年に数ヶ月間、大阪出張が毎週ある。十年以上大阪に住んでいたので、決して知らない土地ではない。それでも、ここ数年はまるで別の街になってしまったと感じる。なじみの店が次々と姿を消し、その跡地にはドラッグストアが新しくできる。外国からの旅行客が…

野良犬の散歩は、においの地図を歩く。

犬と散歩に出かける。ユクの目は真剣そのものだ。あらゆる場所の匂いをかぎ、キョロキョロしながら、時に立ち止まり、後ろを振り返っては、何かを調べているような面持ちで歩く。それが毎日のことなのに、まるで生死をかけた一大事のようだ。そんなに懸命で…

犬と私の格好つけ合戦。

犬はリードを持つ人によって行動を変えるそうだ。ユクの振る舞いも、まさにそれを感じさせる。私がリードを持つとき、妻がリードを持つとき、それぞれにおいてユクの雰囲気は変わる。二人と一匹なのか、一人と一匹なのかによっても、その行動は変わるのだ。 …

犬の付き合いと大人の付き合い。

歳を重ねると、小学生の頃のように、利害を度外視した友だちをつくることが難しくなる。利害がある方が、むしろ付き合いやすい。仕事上の関係なら、新しく生まれることも多い。だが、「ただの友だち」は、なかなか出来ないものだ。 趣味を持つと、仕事とは無…

悪魔のささやき。

午後、どうにも抗いがたい眠気に襲われる。それをなんとかしようと、朝と昼の糖質を抑える生活を始めた。たしかに、眠くならない。けれど、その代償として、いつもお腹が減っている。口寂しさを紛らわせようと素揚げのミックスナッツを頬張るが、そんなもの…