ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

カレーづくりで冒険できない。あるいは海で。

たとえば散髪。
私はこのところ新しい散髪屋さんに行くことをためらわない。気に入っていた近所の散髪屋さんが「画家になります」と言って廃業されてしまったので、新しい散髪屋に通うようになった。切ってもらった直後はさっぱりするので、気持ち良い。また次もお願いします、のような笑顔で店を出るが、また新しい店を探す。すぐには気に入る人など見つからない。それでも散髪の良いところは失敗しても伸びてくるものである、という点だ。あきらめが付きやすいし、いずれ伸びてきて、失敗を忘れさせてくれる。

モデルの仕事もやってます。(ギャラはおやつ)

失敗したくない。という思いから、なかなか前に進まないことも多い。金銭的に損をしたくない、という思いもまったく同じだろう。
ただ、冒険心があるほうが正しい、新しいことに挑戦するほうが良いことだ、という考え方に両手を上げて賛成はできない。さまざま考え方はあって良いだろう。

いつものルートをパトロールするユク坊。

ユクと新しい道を歩くと、いつもより興奮している様子が見て取れる。冒険心と呼んでよいものかどうか分からない。おそらく違いそうだ。好奇心は感じられる。知らない匂い、いつもと違った匂いに対して、興味が膨らんでいるのだろうか。

家から鎌倉方面へ向かうとき、その傾向は強い。ユクは興奮気味だ。その興奮が若宮大路辺りで頂点に達する。右へ曲がれば由比ヶ浜、左へ曲がれば鶴岡八幡宮。ユクは右へ身体を寄せて、カーブを曲がるバイクレーサーのような体勢で横断歩道を渡る。砂浜へ行きたいのだ。鎌倉方面へ行くとき、興奮気味なのは、冒険心でも好奇心でもなく、実は砂浜へ行きたい一心なのかもしれない。

目的はこれよ!(波打ち際までの距離は遠い)

たとえばカレーづくり。
私はギャバンのスパイスを使ってチキンカレーを作ることが得意だ。これは何度も同じ方法で作り続けてある程度の満足度を達成した。今の問題は冒険心のなさだ。出汁を使って、和風カレーにしてみたり、サバ缶を使ってみたり、牛肉や牛すじ肉でつくってみたり、ということが思い切ってできない。もし不味くなったら十人前くらいのカレーを無駄にしてしまうことを恐れてのことだ。

髪の毛は伸びてくるが、カレーは戻らない。また作ればよい、のだが。これがカレーづくりで冒険できない理由だ。

海って最高!(波打ち際までの距離は遠い)

砂浜へ行っても、ユクは一切海には入らない。十メートルは距離を取る。

冒険がすべてではないさ。