ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

西陽射す道で、急な坂道で。バテた犬とその飼い主。

早かった。
夕方の散歩に出掛ける時刻の話だ。
北鎌倉の線路脇の道を歩く。ほぼ毎日、ここを歩く。東西に延びるここの道は、西陽が良く当たる。夕方六時半くらいまで、ずっと当たっている。ユクが散歩に出掛けたがるものだから出発したものの、西陽射すこちらの道を見て、すまん、ユク坊、と謝った。

べろーん。

それでも、ユクは案外元気にグイグイ歩く。まあ、君が行きたがったのだから、自業自得というものなのだよ。

坂は坂である。

いつものコースを歩く。
北鎌倉女子学園に続く急な坂道を上って行く。急な坂道は坂道であって、それだけのことだったよなぁ、といつも考えながら歩く。今では息も上がりやすい。十代の頃は、坂道は坂道だったのだ。今では、急だとか疲れるとか嫌だとか頑張ろうとか色々付いてくる。ただの坂道ではない。

しかも暑い。
ここは何故か風の通りも悪く、一瞬空気が淀む。熱い空気のプールの中を歩いて行くような抵抗を感じる。シャツが汗で重くなる。

暑いと笑っているように見えるので、女学生に可愛いをもらえることもある。

ユクの歩みが鈍い。口を開けてベロを出している。熱を持ったアスファルトとの距離が近いので、犬は大変だ。脚の長いユクと言えども、熱気を感じていることだろう。

犬はいつもの道を行きたがったが、私はショートカットして帰路に就くコースに誘った。

西陽を背に。

帰りになっても、線路脇の道には、まだ西陽が射していた。すまんな、ユク坊。もう一度謝った。可哀想だから抱っこしてやろうと、かがんで抱き上げてやろうとしたら、ユクは嫌がって急に元気に歩き出した。

ワシャまだ大丈夫じゃ!と意地を張っているように見えた。

翌日は涼しい坂を選んだユク坊。