ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

ギターが嫌いな犬に見つめられる飼い主。

ユクはギターが嫌いみたいだ。
古いギターを昨年買った。古いギター独特の木の匂いがする。私はその匂いが気に入って、これを買った。もう一本、傷の少ないギターもあったが、補修跡のある、古い物を選んだ。鳴らした音も、なかなか扱いがむつかしそうだ、と感じたが、むしろそこが気に入った。しかし、エレキギターしか弾いたことのなかった私には、アコースティックギターはまったく別の楽器に思える。正直戸惑っている。だから先月からギター教室に通い始めた。どれくらい弾けるようになったか、などはまた書きたい。

人間のベッドでお休み中のユク坊。

妻が出社の日は、犬と私だけだ。
二階で仕事をしていると、ユクがトコトコ階段をついてきて、私の机の横で丸くなって寝ていることが多かった。お昼の時間が近づいたり、夕方になってくると、ユクは立ち上がり、私を見つめる。「仕事終わらないの?一階に行こうよ」という意思表示だ。オンライン会議をしていても、途中でユクが大きな音をたてて身震いをすることがある。会議をしている先方は音に驚く。犬が横に居まして、と謝罪する。
会議や電話を終えようとしたその瞬間、ユクはすっくと立ち上がる。なぜ終わりが分かるのか、といつも感心する。言葉を理解したり、覚えたりしているわけではない。オテやオカワリも、ジェスチャーや順序、雰囲気で嗅ぎ取っているのは明らかだ。だから、会話が終わる雰囲気を感じて、そうしているのだと思う。

まだか?

問題なのはギターを練習するときだ。
ギターを弾くと、ユクの行動が変になる。マズルをベッドに押し付けて掘るような仕草をする。ギターの匂いが嫌なのだろうか。最近では、その経験が重なったからか、あまり二階に長居をしなくなった。すぐに一階に降りていってしまう。
それはそれでお互い自由にして良いのだが、二階へ上がってきて、お前も降りてこい、というお誘いが頻繁に行われるようになった。

まだか?

毎回、じっと見つめられる。
お利口そうに座って、こちらをじっと見つめる。犬の真っ直ぐな視線を無視し続けられる人はきっといないと思う。一万五千年ものあいだ、この行動に人類は翻弄されてきたのだ。

一階への階段を先導するユク坊。

仕事を切り上げて、一緒に一階に行く。
ユクは自分の思惑がうまく行ったことに満足して、回りながら跳ねている。

ギター上達の道はなかなかに険しいようだ。