ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

他の犬に吠える犬。小走りでやり過ごしたい飼い主。

すべての人と犬に対して友好的な犬であれば、こんなことで悩む必要もない。
ユクには番犬気質がある。言い方を変えれば、縄張り意識なのだと思う。縄張り意識というと人間からすればエリアの概念だが、犬にとっては、所有という概念もそこに含まれているように感じる。ここは自分の場所、また、ここにある物、人、も自分のモノであるという感覚だ。英語で所有物のことを「belongings」と表現するが、それに近い。ユクにbelongして(属して)いる感じとでも言おうか。

お前のものはオレのもの。(ジ、ジャイアン

たとえば、ユクを連れていて、私が他の犬を撫でているときなど、ユクがさっと現れて、その犬を威嚇することがある。おやつをやろうものなら、その威嚇も激しい。ユクにbelongしている人間が持っているおやつは当然ユクにbelongしているおやつであるので、怒っているのだと思う。

オレの砂浜、落ち着くわー。

家の前でベッドに横たわっているときも、配達員さんが近づいてきただけで吠えることもある。不思議だが、吠えないこともある。何で区別しているのかわからないが、配達員さんには大変ご迷惑をおかけしていて心痛い。

何で区別しているかわからない、と申し上げたが、散歩中も同様のことがある。向こうから他の犬がやってくる。友好的に犬のご挨拶ができることもある。ただ、友好的である確率はユクが歳を重ねるごとに低くなってきた。だから、今は、威嚇すること前提でこちらも用心して近づけることにしている。以前は自分より若い犬に対して優しくできていたのだけど、その法則もなくなってしまった。

おやつ!

うまく挨拶できなさそうなとき、ユクの近づき方でわかる。身を低くして、獲物に狙いを定めるチーターのような格好で近づいていくのだ。ユクはふざけているわけではなく、真剣そのものだ。向こうの犬も好戦的であれば、お互いに吠え合ってしまうこともある。そうなると近所迷惑なので、なるべく早くすれ違おうと、小走りですれ違うようにする。

それが駄目なのだ。
と妻に指摘された。
「あなたが走り出すからユクもよっしゃーみたいな感じになって吠えるのです」

なるほど。そうかも知れない。

空気を読んでいる犬。

 

犬は飼い主の気持ちをよく察知している、とも言われる。
ユクがそんなにこちらの気持ちをくみ取ってくれているのは思えないが、あるいはそうかもしれない。

犬だけではなく、人のこともよく感じ取っているのは確かにそうだ。

明日からは、小走りにならず、悠然とすれ違いたい。