ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

低音響く夏の海にて。

私は夏の海が嫌いだ。
筋肉と刺青の原始的なヒエラルキー圧力を感じて居心地が良くない。そんなものは勝手に感じているだけで皆それぞれに自由にしておれば良いだけのことで、ことさら居心地についてとやかく言うほうがその制度に飲み込まれているようなものだ。飲み込まれる自分が嫌で余計に嫌悪感が増大する。

犬と海の家。

犬はそんな人間の事情には構わない。毎週のように海に向かう。大げさではない、ここのところ毎週末、片道一時間以上掛けて海まで行っている。水が嫌いなユクは海に行っても浴びはしない。砂浜に鎮座し、少し顎を上げた感じで空中の匂いを、息継ぎも忘れるほどに捕まえている。暑さのせいで、舌も垂れてくる。口を開けた犬の顔は、人間から見ると、とてもご機嫌良さそうに見える。実際にご機嫌は良いのだが。

機嫌良さそうなユク坊。

この季節、海水浴客が作った砂の山が砂浜にはいくつかできている。建物のようだったり、動物の形のようだったり、誰かの顔だったり。そのような山を見つけると、ユクはマーキングをする。マーキングというのは突起物に行いたくなるものなのだろうか。道を歩いていても、木や電柱などに行うことが多い。

縄張り拡大に余念がないユク坊。

海からの風が強い。
波の飛沫が風に乗って私たちに吹き付けてくる。眼鏡を通して見える風景は段々と霞がかってくる。汗をかいたわけでもないのに、腕がじっとりと湿ってくる。ああ、気持ち悪い。シャワーを浴びてすっきりしたい。そのようなことを考えている傍で、犬が楽しそうに歩き回っている。

生き生きとした目をしたユク坊。

犬がいなければ、夏の海に来ることもなかったかもしれない。
夏の海のイメージが更新されていく。