ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

北鎌倉駅へ。魔の五分間。

ことさら暑い暑いと言いたくはない。私の信条にも反する。信条などと格好の良い言葉を使ったが、単なる反抗心だ。世の中が右と言えば、本当に右なのか、と言いたくなる。それだけのことだ。こういう性根は成長とともに変わるものだと思っていたが、そうとも限らないらしい。成長していないのかもしれない。暑い。

早く二階に行きたくて駄々こねているユク坊。

エアコンの効いた部屋で仕事をしている身分で、何を申すか、というところではあるが、私にだって毎日欠かせぬ屋外での仕事がある。犬の散歩だ。仕事と呼ぶには疑問が残る。楽しく犬と歩いているのであるから。ただ、保護犬を引き受けた以上、義務はある。そしてユクは家の中では用を足さない犬だ。毎朝夕、外に連れて行く義務がある。また、犬の健康のためにもよく歩かせてやる必要がある。足の筋肉を維持するため、適度な距離を毎日歩く。それはもちろん人間の筋力維持にもなっている。

楽しく散歩しているときのユクの尻尾。

しかし、こうも暑いと問題は散歩に出かける時刻である。
西陽差す北鎌倉の線路脇の道は、夕方五時くらいでもまだまだ熱い。日陰が増える駅のそばに行くまでが大変だ。五分ほどのことではあるが、ユクの舌が口から垂れ下がる。ユクは口を閉じていたほうが凛々しい。口を開けていると、少し笑っているようにも見え、しまりのない顔つきになる。ただ、そのほうが世間受けはよい。「かわいい」と道行く女の子に言われ、「キュート!」と外国人観光客に言ってもらえる。

二階に向かうワクワクした後ろ姿。

午後四時くらいになると、ユクが散歩に行きたいと意志を示し始める。仕事部屋まで呼びに来たり、最終的にはオスワリをして、首輪を散歩用に変えてくれ、と促す。「まだ地面が熱いぞ、知らねぇぞ」と言うが、理解してもらえない。

五時半ともなると誰もいなくなる夏休み中の北鎌倉駅周辺。

そして、北鎌倉駅までの魔の五分間が始まる。
宮古島出身犬らしさを感じる、力強い足取りだ。