北鎌倉には観光客向けの飲食店しかない。
しかない、は言いすぎかもしれないがそうでもないと思う。
つまりは金額が高いのである。
となりの駅まで足を伸ばせば、ファストフード店がある。
しかし、仕事が忙しく、となり町へ行く時間も惜しい。
そのようなときに利用したくなるのが出前である。Uber Eatsである。
Uber Eatsは高い。しかし、持ってきてくれる手間賃、となり町まで出向いていかなくても良くなった時間のことを考えれば、安い。無理矢理にでもそのように考えて利用していた。こういうものは一度使うと便利さに溺れてしまう。毎月のようにUber Eatsを利用する日々となった。
過日。
カツ丼をUber Eatsを通じて注文した。が、約束の時間を三十分過ぎても届かない。店に電話するとあと十分くらいで着きます、との返事。その後、二十分くらいしてから届いたが、電話をしてから調理して慌てて持ってきたのではないか、とも思えた。一時間以上も時間を超過しておいて、詫びのひとつもない。せいぜいそのようなサービスなのだ。
頭にきたのでUber Eatsのアカウントを消し、アプリも消した。二度と使うことはないだろう。退会手続きを進める中、画面には会費を安くしますよ、とか、これまでこれだけ得しましたよ、などと引き止めるための文章や数字が並んだが、この期に及んで利では動かされない。このあたりの意固地な質は父親譲りのものなのではないかと思っている。
ユクは利だけで動いている。
おやつをくれるなら近づくが、くれないなら無視だ。撫でてくれる、などはどうでもよいことなのだ。おやつをもらっても撫でさせないくらいに徹底している。ギブアンドテイクすら無用だ。ひたすらテイクするのみだ。
人間の意固地とは違うが、もう少し利だけではなく、愛想も使えばよいのに、と見ていて思う。
だが、羨ましくもある。