と思っている。
年長であり、下戸で妻の晩酌にも付き合えない私は一番に二階へ上がり床に就く。しばらくKindle端末で読書をするが、すぐに力尽きて眠る。しばらくしてから、風呂を上がった妻が隣りにやって来る。夜は大体そのような感じだった。犬と寝始めるまでは。
犬も一緒に寝始めてからは、私が二階へ上がる気配を察知するとすかさず犬もついて来るようになった。適当な時刻になれば、二階への扉の前で待機するほどだ。絶対に一階へ置いていかれないように、という意気込みを感じる。
ユクは私と一緒に階段を駆け上がり、ベッドの下でお座りをし「ベッドに上がっても良い」の合図を待つ。こういうことは悪い顔(いたずら顔)もせず、お利口にこなす。
まずは私がベッドに横になる。そして、良いよ!の合図とともに、ユクが跳び乗ってくる。私の腹に、だ。両手脚を前後に伸ばして、私に折り重なる。犬と人とで十字架を描き、しばらくそのままの状態が続く。重たい!謎の行為だ。ユクはその後、パタンと横になってしばらく寝息をたてる。
階下でかすかに音がする。ユクがハッとして起きる。次の瞬間、タカタカタカタカ、と階段を軽やかに降りていく。妻を呼びに行ったのだ。朦朧とした私は耳を澄ます。
ドタドタドタドタドタドタ!
「痛いでしょ!」
「噛まない!」ダッタカタ!
「はいはい、分かったから」
ドタドタドタ!
テケテケテケテケ!
妻を連れて、ユクが階段を駆け上がってくる。
妻によると、ユクは、「何をもたもたしてるんだ?」「早くお前も上がってこいよ!」という感じで体当りしてきたり、つついたり、甘噛みしたりするそうだ。顎(マズル?)で指図する仕草も。
これは群れからはぐれる者を群れに戻そうとしているのではないか。少なくとも何か足並みが揃わないことがユクには不服のようだ。牧羊犬は群れからはぐれた羊を群れに返す、集める、という仕事をするそうだが、ユクにも何かしらそうしたい遺伝子が備わっているようだ。
一階で妻が寝落ちし、夜中まで上がってこないことが以前はあり心配した。いまはユクが呼んできてくれるので、そういうこともなくなった。家族の面倒見が良い犬である。