ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

さらば青春の光。

さらば青春の光」を観た。
お笑いではない、映画のほうだ。原題は「Quadrophenia」。
学生の頃、モッズのスタイルに憧れた。スーツを着て、軍払下げのパーカーを着る。モッズメーデーにはわざわざ神戸から東京のライブハウスにまで出掛けた。かつてイギリスで盛り上がったムーブメントのひとつである。私はバブルの日本で青春を過ごしたぬるい世代なので、イギリスでの政治的背景などとは無関係だ。その辺りをよく知らないまま、モッズのファションや音楽的な部分にただ惹かれた。

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さらば青春の光」は当時のイギリスでのモッズムーブメントを題材にした映画である。学生であった私たちはその映画のビデオを何度もセリフをおぼえてしまうほど観て、モッズを勉強した。

興味なし。(し、尻尾・・)

観るのは三十年ぶりくらいだろうか。
よくおぼえている部分とまったく忘れてしまっていた部分があった。人間の記憶などいい加減なものだと改めて思う。

この映画の後半で、ブライトンの暴動が描かれる。一九六四年にイギリス南東部の街ブライトンで実際に起った出来事である。パーカーを羽織ってスクーターに乗るモッズと、革ジャンを着てヨーロッパスタイルのバイクに乗る「ロッカーズ」と呼ばれた集団の抗争だ。

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二十代のときに観た感覚とまったく違う。
何と言うか、目線が違う。感情移入する対象が違うとでも言おうか。
いま見て思ったことは、「そんなに暴れるなよ」というつまらないものだった。
若者の恋愛や葛藤、理解してもらえない大人への反抗など、若いときに観たときには、完全にそちらの目線だった。しかし、歳を取ったいま、暴動に巻き込まれている海岸の人たち、つまりモッズでもロッカーズでもない人たちの目線になって映画を観ていた。

何かを観る(あるいは読む)ときの自分の状況、特に年齢というものは大きい。

取締り目線。

十年ほど前に「アルプスの少女ハイジ」を観たときにも同じようなことを感じた。
ハイジと同じくらいの年齢のときに観たハイジは楽しかったが、大人になってから観たときはおじいさんの目線になっていた。むしろ天真爛漫なハイジを困った子どもだ、くらいに感じてしまっていた。

それからどした。

想像するに、犬に対しても子どもの頃と大人になってからでは接し方が変わるのではないか。
極端に単純化すると、友だちか子どもか、というところだろうか。
ユクは友だちでもあるが、どちらかというと世話をしてやらなければいけない子どものように感じている側面が大きい。自分が子どもであったら、ただの友だちだったろう。

いや、子どもどころではない。
何でも言うことを聞いてやりたい孫みたいなものかもしれない。

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