ユクはそのことを十分に理解しているようだ。
二階で一緒に寝ている人間と犬は、起きたら一階へ降りる。ユクは一番に下に行きたいので、階段を先導して降りて行く。テッテコテッテコテッテココテドン。いつも同じリズムで降りて行く。シャッターを開ける瞬間が好きなユクは、シャッターの前に張り付いて、人間がそれを開けるのを心待ちにしている。ここまでは毎日同じだ。
いつもなら、シャッターが開けられた瞬間、鼻先を外に向けて外の匂いをかぐ。本当に匂い中心に生きている。
しかし、今朝は雨が降っていた。
開けた瞬間、ユクのテンション(と尻尾)が下がっていくのが感じられる。その後の犬はと言えば、起きてこなかったことにして、もう一度一階で寝始めてしまう。二度寝だ。
妻がユクを朝の散歩に連れ出そうと声をかける。なかなか起きない。丸くなったまま聞こえない振りをしている。それでもしつこく呼びつづけ、語気を少し強めたところで、ユクがへそ天をした。もちろん「へそ天は絶対」なので、人間たちは歩み寄り喜びながらお腹をさすってやる。ユクはへそ天しながらも、目を開いて人間の様子を観察している。しめしめ、といった表情に見える。
へそ天をされてしまっては、立ちなさいと厳しく言っていることも中断してお腹を撫でなくてはならない。そんなことをうまく学習して何度もへそ天を繰り返す。
私は生ゴミを集めて袋に詰め、ゴミ収集場まで持って行った。帰ってくると、ユクがへそ天したままだった。まだやってる。
結局、朝から七回くらいのへそ天をしてから、雨の散歩に出掛けたユクと妻。