ユクは保護犬で、半年くらいの野良犬経験がある。人から食べ物をもらうことを知っていたようなので、その期間にどなたかに食事を頂戴していたのだろう。ただ、人に馴れているか、といえばまったくそのようなことはなく、警戒心がとても高い。「とても高い」割に、食べ物をちらつかせられると、食べてしまうので、警戒心があるのやらないのやら、とも感じる。
保護されたときも食べ物に釣られたに違いない。
生まれながらにして人間と暮らしていたわけではない元野良犬は、お家の中で用を足せない。雨でも嵐でも外に出なければならないことは、何度も書いた。
雨の日の散歩を何度も経験すると、少しは慣れてきたのか、濡れながらでも遠くまで歩きたいと、意思を示すようになった。無論、言葉で示しているのではなくて、引きの強さで人間がそれを感じているまでだ。
ユクの良い所は沢山ある。その中のひとつに、何かを着せられることを嫌がらない、というものがある。Tシャツだって、冬用のコートやダウンだって、何でも着てくれる。そして、ときには着て誇らしげな顔をしていることもある。新しい首輪を着けたり、洋服を着せたりしたときに、私たちが褒めちぎるので、何か悪い気はしないのだろう。
雨合羽も嫌な顔をせずに着てくれる。この日はオレンジ色の新しい物を試してみた。妻がユクのために合うものを探してくれていた。これは耳まで覆うことができる。濡れるところは少なくなるが、耳を塞いだまま歩くのは可哀想だ。途中で耳を出してやったが、隠れていてもそれはそれでそのまま歩いていた。どちらが良いのだろう。
新しい雨合羽はユクの体型にもぴったりだ。良い物を買ってもらったな、ユク坊。
雨よけのためのものだ、と分かっているのだろうか。