ユクは茶白の犬だ。
頭の辺りとお尻の辺りが主に茶色が強く入っている。胴体には白をベースに茶色の斑点柄が入っている。この斑点柄が鹿のようであるから、この犬は「ユク」という名前になった。アイヌ語で鹿の意味である。
犬と一緒に暮らし始めて、やはり気になるのは犬の毛である。ユクは八割ほどが白い毛なので、抜け落ちている毛も白が目につく。そして、暗い色の洋服を着ていると、その白い毛の付着に気づくことが多い。気になる、と申し上げたが、実はもうほとんど気になってはいない。慣れたのだろうか。
黒いセーターにユクの毛が付いていても、コロコロで簡単に取って、多少残っていても、それで平然と出かけるようになった。
この白い毛。灰色の洋服だとあまり目立たない。元々灰色が好きで、スウェットやスニーカー、靴下やTシャツなど、身の回りには灰色のものが多い。黒も好きだが、黒は白い毛が相当に目立つ。犬を抱きながら座ったり、犬を散歩に連れて行ったり、というときは、黒を身に着けなくなった。これは犬とは関係のないお出かけのときに限るようになった。
ユクが「あれ?黒を着てるじゃん、オレは置いていかれるのか」という風にはならない。色では判断をしていないと見える。いつもより多めに匂いを嗅ぎ、こいつどこに行くつもりなんだ?という顔でこちらを見やるので、外出はバレている。ただし、色ではなく、匂いで感じ取っているように思う。
ユクも灰色が似合うように感じる。
ハーネスやリードも灰色だ。
犬が自分で選んだわけではないが、俺たちはなんだか灰色だよな。