北鎌倉が連日賑わっている。
もっとも人出のある季節は紫陽花の季節、六月だ。二番目に人が増えるのが十一月から十二月にかけてのいま、紅葉の時期である。いわゆる観光地に訪れると、皆が写真を撮っている。二十世紀末までは、フィルムカメラを持つ人のみが撮影をするものだった。それが、現在ではスマートフォンにカメラが付いているものだから、ほぼ全員が撮影を行うようになった。
私はフィルム時代からカメラを使ってきた世代だ。
子どもの頃、パンダを一眼レフカメラで撮影した。かなり良い写真が撮れたと思ったが、母親がフィルムの巻取りを失敗し、後で写真を観ることは叶わなかった。大泣きをしたが、そもそもちゃんとフィルムが入っていたのか、写っていたのか、定かではない。もしかしたら、母親がちゃんと入っていなかったフィルムを不憫に思い、自分の責としてくれたのかもしれない。
いずれにせよ、写真が現像されなかったことで、撮影したその瞬間のことを鮮明に記憶しているし、大泣きしたことを含めて、パンダ事件は心のフィルムにはしっかりと写し取られている。
写真一枚の価値は二十一世紀になって、とても軽いものになったと感じる。フィルムのときは一枚がとても大切に思えた。ピンボケの写真ですら、削除なんてできなかった。ピンボケも込みで思い出となった。
スマートフォンでいくらでも撮れるようになったことを嘆いているわけではない。私は今の時代が大好きだ。スマートフォンで沢山の写真を撮っている。九割が犬の写真となっている。フィルム写真なら全財産をここに投入しなくてはならないほどに撮っている。
良い世の中だ。
夢見ていた暮らしが可能となっている。
ところで。
紅い葉も綺麗だが、黄色い葉のほうが、どちらかといえば好きだ。
黄色い葉の代表は銀杏だろう。浄智寺にも、雪ノ下にも、台にも、立派な銀杏の木がある。ぎんなんが落ちて、地面が大変なことになるという困ったところもあるが、付いた葉も散る葉も落ちた葉もとても綺麗だ。
いちょうもぎんなんも「銀杏」と書くのはなんとかならないものか。
もみじもこうようも「紅葉」と書くのもなんとかして欲しい。
そうだ。紅葉は黄葉とも書くらしいです。