まったく旅行記の体をなしていないが、修善寺旅行の話はつづく。(すみません)
私たちの止まった宿は、「ラフォーレ修善寺」というエリアの中にある宿だ。ホテルやらコテージやら、ゴルフ場やら宴会場やら、とてつもなく広い敷地に様々な施設が存在している。そうだ、テニスコートやバーベキュー場などもあった。昭和の高度成長期に出来たリゾートホテルだけあって、豪華な感じがする。
ただ、その豪華な感じは、昭和の豪華な感じであり、平成でも令和でもない。まさしく昭和である。
昭和であるから、レトロな雰囲気も感じられる。古ぼけた感じと言えなくもないが、今どきの言い方だとビンテージ感がある、ということだろう。私自身もビンテージなので、ちょうど良いだろう。
ビンテージ感あふれるエリアの中で、比較的新しい宿泊施設がある。二〇一二年に新しくできた「山紫水明」という宿だ。ここには犬と泊まれる部屋が用意されている。十二年経った部屋だが、さすがに新しさを感じた。部屋に露天風呂が付いていて、いつでもお風呂に入れる幸せな空間だ。
山を切り開いて作られたエリアなので、犬の散歩にも困らない。山の中とはいえ、舗装されたところも多いので、山歩きは困るという方でも問題はないだろう。そして、ゴルフ場や散歩道では、野生の鹿に出会えた。
ユクはアイヌ語で鹿という意味だ。身体の斑点もようが鹿のようだから、そのように名付けられた。鹿という名の犬が初めて鹿に出会った。
ユクが鹿に出会ったらこうなるだろうな、という想像通りの反応を見せた。遠くから駆け寄る仕草を見せて、相手を威嚇する。駆け寄る動作をしたところでリードで繋がれているので、実際は駆け寄れない。そのことを分かっていてやっているのか。それともリードがなければ本当に駆け寄っていくのだろうか。駆け寄ったところでユクが敵う相手ではない。
威嚇された鹿の方は、早くどこかへ行かないかな、というふうに私たちの方をじっと見ている。ユクは偉そうな顔のまま興奮気味だ。
君も鹿なのだよ、と言ったところで、何のことなのか分かる由もなし。