ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

久方ぶりの再会。まったく喜ばない犬と喜ぶ飼い主。

母の十三回忌で父の住む愛媛県に帰省した。
私は四国に住んでいたわけではないので、これを帰省と言うのかどうか、正確なところは知らないが、父の住むところへ行った。そこに母のお墓があり、法事を行ってくれるお寺もある。

四国は自然でいっぱいだ。普段の生活から比較して、そのように強く感じるのであろうか。いや北鎌倉も自然でいっぱいだ。滋賀県に行けば、それはそれで、滋賀は自然でいっぱいだ、などと言いそうだ。そのような細かいことはともかく、川の横にある道などを眺めて、ここにユクを連れてきたら、さぞかし喜ぶだろう、とか、いくらでも散歩する道があるなぁ、とか、ついつい考えてしまう。「ここに犬が居たらなぁ症候群」だ。

心地よさそうな川沿いの道。

私が留守でも妻が面倒を見てくれているので、安心だ。ただ、ユクは妻に対して大変わがままな犬なので、それが心配だ。午前中、妻からメールが届く。「ユクに連れられて、朝ごはんまだなのに海に来ました」とあった。朝の散歩は、いつもなら三十分程度だ。近くのお寺さんへ行って、返ってくる。そして朝ごはんだ。ところが、その日は、お寺には向かわず、鶴岡八幡宮方面へユクが引いていき、さらには由比ヶ浜まで連れて行かれたそうだ。ユクは由比ヶ浜が大好きなのだ。

大好き、と言っても、寝そべってゆっくりするだけである。
そして、帰ろうと促すと「阿呆」になって、駄々をこねる。海に来ると面倒くさい犬になるので、それを覚悟で行かねばならない。

妻の報告メールが続く。
やはり、帰宅拒否犬に成り果てた、とのこと。
まったく、やりたい放題である。

帰宅拒否犬

今回、私は三日間家を空けた。
ユクと丸三日ぶりの再会だ。さて、どのくらい喜んでくれるだろうか。

私はワクワクしながら、家の扉を開けた。ユクちゃーん!と私は手を広げた。
ユクは明らかに「あれ?もう帰ってきちゃったの?」みたいな顔をした。
わがまま放題できていたのに、もうできないではないか、ということだろうか。
その後も、妻が私の不在中にあった、様々なことを話してくれた。それを聞いている間もユクは神妙な顔で私たち夫婦の顔を見ている。都合の悪いことを報告されているのではないか、と心配しているようでもある。

以前にもこのようなことはあった。やはり私は、ユクにとって怖い親父のような存在なのかも知れない。