ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

犬と山歩き。人にやさしく。

大変わがままで手を焼いている。犬の話だ。
言葉が分からないので、ユクは、身振り手振りや語気を感じ取り、雰囲気で振る舞いを替えているように見える。雰囲気をつかむのがとても上手だ。ただし気をつけなければならないのは、何で叱られているのか、ということを分からせるのが難しいというところだ。たった今、叱られている、ということは雰囲気で理解できる。だから、今ユクが悪さをしようとしたその瞬間に叱ってやらねば分からない。後から、「ユクさぁ、さっき紙ゴミ置き場を荒らして包装紙を持ってきたよね。あんなことしていいと思ってるのか?」などと問い詰めてもさっぱりだ。人間の子供ならあとで叱ろう、諭そう、とできるが、犬の場合はその場勝負である。

それは私のスリッパ……

わがままなのも当たり前だ。言葉や理屈というツールがない以上、犬側としても、態度で表現してみなければならない。結果、人間がそれに応じてくれなければ、ああ駄目だったか、ということになる。先日も由比ヶ浜で、飼い主さんがリードを引いているのに、頑として動かない柴犬を見かけた。帰りたくない、を態度で表現しているのだ。ユクもたまにあれをするが、あの柴犬ほどの固まり方はしない。飼い主さんと目配せして、微笑みあった。

帰りたくない気持ちの表現。

犬のわがままは、他人様に迷惑をかけないことであれば、なるべく聞いてやりたいと思っている。難しいのはおやつで、欲しがるだけやりたいが、食べ過ぎはまったく良くないし、人間の食べている塩の利いたものも良くない。そこは可哀想だが我慢してもらう。なるべくユクの意向を汲んでいるのは、散歩での行き先だ。

山に来られてご機嫌。撮影にも応じるユク坊。

ユクは山歩きが好きだ。
だから、よく山の方面を選択する。夜の散歩や雨上がりの散歩では山道は危険なので、そのときはこちらの意思を通すのだが、それ以外のときはなるべく付き合ってやろうと考えている。

スズメバチの出る夏場も山には行かないようにしているので、秋から春にかけてが山歩きの季節となる。ここのところ、ユクは山方面ばかりを選択する。三日四日連続は当たり前だ。朝から山を越えていくこともある。文字通り朝飯前に山越えである。

まだ帰らないよな?

犬のわがままを聞いてやりたいのは、犬と過ごせる時間に限りがあるからだが、日々、家族や友達とだって、過ごせる時間には限りがある。他人にやさしく、というのはそういうことに気づくことなのかな、ユク坊。