ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

再会にピリッとした犬。

過日。三泊四日の出張で、しばらく家を空けた。
ユクと三日離れるのは初めてだったかもしれない。ひょっとしたら、帰宅したときには飛び跳ねて再会の喜びを表現してくれるのではなかろうか、と考えた。

四日間の犬の世話すべてを妻にお願いした。世話は大変だが、離れてそれをしていないと世話が恋しくなる。人間らしい感想であろう。

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世話してくれ。

帰宅日の夕刻。新横浜駅まで帰ってきて、ユクの場所を確認する。Apple社のAirTagをユクに付けてあるので、どこを散歩しているのかはiPhoneで確認できる。海の方まで行っている。随分と遠出をしているのだな、北鎌倉駅でのお迎えはないな、と思う。
鎌倉駅まで乗っていって、突然ユクの前に現れて、サプラーイズ!とやることもよぎったが、ラップトップコンピュータが二台入ったカバンを持ってやるほどのことか、と思い直した。

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段葛を抜けて海へ行くこともしばしば。

結局、先に家へ帰っていることにした。辺りは暗くなってきた。
家の電気を消しておいて、二階から登場するのはどうだろう。まだ、サプライズの方法を考えていた。ユクの現在地を確認すると、ようやく家の近くまで戻ってきていた。

挙げ句、特別なサプライズをすることなく、普通に玄関に帰ってきたユクに、バァ!とやってみた。ユクは固まった。耳を倒して、少し悪さをして叱られたときのような表情でこちらを見た。ん?何か悪いことでもしていたのか。バツ悪そうに妻の顔を見たり、キョロキョロしたり。

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地面に飴を発見したユク坊。拾い食いはいけません。

どうやらユクにとって私という存在は、ピリッとする対象のようだ。あ、先生来た、みたいな感じか。確かに友達という間柄ではなく、あくまで私は、命令する立場を維持しているため、こういう関係になってしまったようだ。しかし、肝心なところでこちらの言うことを聞かない犬になってしまっては、ユクの生命が危ない。だから、私はいまの関係で良いと考えている。

お隣さんにお会いしたときのユクは、大好きな先輩に偶然出会ってしまった中学生乙女のようにうろたえる。散歩から帰ってきて、食事を用意してもらっているときは、何度も高く飛び跳ねて喜ぶ。それなのに、私が帰ってきたら、ピリッとするのだ。それで……良い。