ユクはお留守番が得意だ。
もちろん人間側が一方的に「得意」と言っているだけで、得意がっているわけではない。見守るためのカメラを設置しているので、留守番をしているユクを見ることができる。まったく得意そうにしていない。むしろ、退屈でたまらんわ、と全身で表現しているように見える。これについても一方的な表現であり、本当は静かでええな、とすやすや寝ているだけなのかも知れない。
飼い主が家に帰ってきても、飛び跳ねたり、吠えたりして、喜びを表現する犬ではない。ああ、お前か、くらいのものだ。前は拍子抜けしていたが、慣れた。
飼い始めたとき、犬の本などを読むと、分離不安症の犬がいる、と書いてあったので、とても心配した。なるべく留守番の時間を短くすることはもちろんのこと、いたずらをしないように入れる部屋を制限したり、何かと対策を施した。
カメラの映像によると、ユクは留守番中、いたずらをすることもないので、いまは何の対策もしていない。
分離不安症の犬は、部屋を移動するだけでも付いてきたり、扉の前でオスワリをして待っていたりするらしい。ユクはしない。二階に上がっても、知らん顔している。しばらくしてから、自分で扉を開けて、二階へ上がってくる。飽くまでも自分のペースで行動する犬なのだ。
さて、修善寺にやってきた。
伊豆旅行ブログも今回で三回目。ドライブ、蕎麦屋ときて、ようやくホテルに到着する。ユクを連れて外泊するのは初めてだ。
ユクに関する準備を妻が完璧にしてくれていた。私なら忘れ物だらけだろう。犬と泊まれることを謳っているホテルなので、ケージがあるし、フード用容器もある。ペットシーツや排泄物の処理袋まで備えられていた。
警戒も少ししていたが、ユクは素直に部屋に入った。
妻が備え付けのボウルに水をいれてやっても、ユクは飲まない。家から持ってきた、いつものボウルに入れてやるとペチャペチャ飲んでいる。他の犬の匂いでもするのだろうか。デリケートな奴だ。
分離不安症を見せないユクが、妻の歩くところ全てに付いて回る。家ではこのような行動を取らない。こんな知らないところで置いていかれたらどうしよう、と不安なのだろうか。かわいいところがあるじゃないか。
家へ初めて来たときも置いていかれて、窓の外をじっと見続けて悲しい声を出していた。あの経験を思い出しているのか。
どこへ行っても私たちはずっと一緒だぞ、ユク坊。