人間の話だ。足の親指をひどくくじいた。
ブラジリアン柔術の練習中、足の親指を怪我した。スパーリングという実践的な練習中ではなく、技の研究をしている最中に、相手の身体とマットの間に足の親指が曲がったまま挟まってしまった。バキボキ!と音がしたけれど、そのときは何ともなかった。帰る頃に少し痛み始めたので、念のためアイシングをしてから寝たが、朝起きると見事に内出血していた。レントゲンを撮ってもらったところ、「骨折疑い」ということになった。痛みの度合いからして折れてはいないだろう。以前、足指を骨折したとき、いつもは5分で行けるカレー屋さんに30分かけて歩いていったことがある。あれに比較すれば半分程度の痛みである。レントゲン写真によると、折れてずれたりしていなかったので、ひとまず安心した。
ブラジリアン柔術を始めてちょうど七年になる。格闘技未経験(幼少の頃、空手を習ってはいたが)であったので、最初の三年ほどはよく怪我をした。ようやく怪我をしなくなってきた、と思っていたところだったが、油断した。私は六十キロに満たない体重であり、組む相手のほうが大きいことが多い。そのことも危険を増やす要因となっている。鍛えたりしなくとも、大きい人間は強い。
昨夜の練習開始時、いま思い返せば予兆があった。ウォーミングアップの途中、ブリッジをしていて左脚の付け根に違和感があった。以前は週に三回も四回も練習していたが、コロナウイルスの流行で練習回数はめっきり減った。今回も十日ほど、前回の練習から空いてしまっていた。久しぶりだからこんなものか、と考えていた。それでも練習を始めると、休養十分な身体は久しぶりでも案外動いた。そんな気はまったくなかったのだが、どこか調子に乗っていたのだろう。簡単な技の練習をしているときに怪我をした。違和感をやり過ごしたことがミスだったと反省する。
身体は連動しているので、どこかに違和感がある場合、そことはまた別の場所が正常に動作しない、というようなことがあるのだろう。今回は、末端である足の親指がうまく立ち回れなかったのだ。
くじいた足の親指に踏ん張りが効かない。さて、問題は犬の散歩である。ユクとの散歩コースは山道が多い。決して険しくはないが、木の根が剥き出しになっていたり、岩肌そのもののような坂があったりする。そういうところへはしばらく行けない。二週間ほどは近所を行ったり来たりしよう。ご近所のお友達犬に沢山会えるとユクも満足してくれるので、皆の集まる良い時間帯を狙いたい。
怪我してから初めての散歩に行った。少し痛かったが何とかなりそうだ。私がいつものようには走れないので、ユクに「ゆっくり歩いて欲しい」と何度もお願いした。散歩の中盤からは引っ張らずゆっくり歩いてくれた。伝わった、と思いたいがただの気まぐれであろう。明日もゆっくり歩いてくれたら、伝わったということにしよう。