犬は自分の物という概念を持っているらしい。玩具を与え放しにしないほうが良いとも言われる。いろいろと玩具を与えて自由にさせていると、沢山持ち物のある自分は偉い、と犬がなってしまい、飼い主の言うことを聞かなくなったりするらしい。言うことを聞かなくなる実験は怖くてできないが、なってしまっては困るので、玩具はメリハリをつけて渡すようにしている。一応、「貸してあげるよ」と言って渡す。
それでも、ケージの上など、ユクが頑張れば届きそうな所に玩具を置いてあると、それらを咥えて持ってくることがある。これで遊んでくれ、ということのようだ。ユクは引っ張りっこや持って来いの遊びが大好きだ。引っ張りっこする玩具は大体破壊されていることも多く、人間側の持ち手部分が少なくて困る。つまむ様にして小さくなったロープの端を持つ。指先でつまむことは柔術のトレーニングにもなるから良いか、と遊びに付き合っている。
こちらは玩具を「貸してやる」つもりで渡しているが、ユクからしてみれば、「預けてある」くらいに考えているのかもしれない。ベッドで玩具に囲まれて幸せそうに寝ていることもある。
ユクが家の外へ出たときに、土やコンクリートの上で座ったり寝そべったりしていては可哀想だ。そういうことを話していたら、ある日、妻がユクのために、折りたたみのアウトドア用ベッドを買ってくれた。
何故かユクはこのベッドが自分のための物であることがすぐに判ったようだった。初めて使ったときから、広げると同時に飛び乗った。その後も、外でベッドを準備している段階から、クーンと切ない声をあげ、早く外へ出たいとそわそわするユク。ハーネスにも自分から鼻先を突っ込んでくるほどに急いでいる。一刻も早くベッドに乗りたいようだ。
これに乗っているときはとてもおとなしい。近所の犬の飼い主さんたちも、通りがかりに、風流ですね、と言ってくださる。何を想っているのか不明だが、たしかに風流に見える。馬鹿走りをしている同じ犬だとは思えない。
この風流な側面を、ぜひ積極的に育んでいただきたい。