ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

相手に気づいてもらうには。高度な尾行!?

私の大学時代の友人に特殊な尾行能力を持った男がいた。
大学は神戸にあり、大阪から通ってくる人たちも多かった。その変わった友人(以降K君とする)も大阪から通っていた。
以下、別の友人A君に聞いた話だ。

匂いをたどる。

学校からの帰り道。前をK君が歩いていたそうだ。途中寄り道もしたいので、話しかけずにいたそうだ。その後A君は三ノ宮駅に着き、本屋さんに立ち寄った。本棚の向こう側にK君が見える。そこでもやはり話しかけることはせず、自分の見たい本を読むだけにしていた。本屋を後にし、大阪の地下街を歩く。前にK君が歩いている。A君は思ったそうだ。「尾行されている!」しかしそれはかなり高度な尾行である。前に現れる尾行なのだ。

大体わかってきたぞ。

なぜこのような巧妙な尾行を行うのか。それにはK君のプライドが見え隠れする。自分から声をかけるのではなく、相手から声をかけさせたいという、小さなこだわりである。A君もK君のそれを感じ取ったからこそ、道中声をかけずにいたのだ。

どちらが先に挨拶をしたか、というような小さなことにこだわる話を耳にしたこともある。そんなことどうでも良いではないか。

ぼくここで良い子にしています。

ユクは、人間に気付いてもらおうと必死になることがある。もちろん食べ物をもらうときだ。散歩の道中、おやつをくれる方々にはしつこく存在をアピールする。
その方の背後に駆け寄り、並走し、マズルがちょっと手に触れるくらいのタッチを試みる。ぼくここにいますよ、とお知らせしているのだろう。それでもおやつが出てこないようだと、二メートルほど前に出て、オスワリをして振り向く。ぼくここで良い子にして待ってますよ、とお知らせしているのだろう。

どちらさまか、この可愛そうな犬にお恵みを。(やめて!)

色々な知恵を働かせてはいるが、見え見えでうまく行かない。それよりも飼い主である私はとても恥ずかしい思いをする。犬のしていることだから、と皆さん苦笑いで済んではいるが、もう少し欲を抑えて格好良く振る舞ってほしいものだ。

K君のような小さなこだわりのひとつでも持って欲しいものである。

成功するからやめられないのよ。