ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

大阪の街を行儀の良い犬たちが散歩している。

秋から冬にかけて、毎週大阪へ出向く。
四ヶ月ほど、毎週新幹線に乗って、大阪へ行く。関西人の私にとって、富士山は特別だ。何回見ても飽きないし、見えると年甲斐もなくワクワクする。

ワクワク。

鎌倉の高台からも見えるので、ユクとの散歩の折にも眺めることがある。高台へ行くのは大変だが、眺めがご褒美となる。犬はといえば、富士見などに興味があるわけもなく、足元に生えている草花の匂いに夢中である。

マンジュシャゲ

一応話しかける。
ユク、富士山だよ。すごいね。気持ちいいね。

大阪の街を歩く。
東京ほどではないが、人口密度が高い。普段、鎌倉の山の方をうろうろしている私からしてみれば、くらくらする人の多さである。自宅で仕事をしていて、通勤をしていないのも関係しているように思う。
コロナのパンデミックも相まって、人混みが苦手になったのか。

沢山の人が待つ信号機が青になった。他の人と少しタイミングをずらしてスタートを切る。横断歩道のレースにはまったく興味がない。どうぞお先に。

向こう側からも人の波が押し寄せてくるのが見える。犬が見えた。犬?鎌倉なら日常的な光景であるが、大阪のど真ん中、それも横断歩道に人の行き交う交差点である。
間違いない、犬が歩いている。しかも秋田犬と見える。とてもお利口に飼い主さんの横をペースを合わせて歩いている。ユクのようにキョロキョロしていない。ユクがここにいたら、と拡張現実を目の前に繰り広げる。左右の自動車や人を蹴散らすように横断するユクが見える。私には見える。

商店街を歩いていても、トイプードルやポメラニアンのような小型犬の散歩によく出会う。この辺りにもこんなに犬がいたのか。ユクと暮らす前は、あまり気にしたことがなかった。
皆、街の中でも行儀良く、感心する。

くんくん。

元野良犬で臆病で、犬や人とのコミュニケーションが下手なユクには、北鎌倉が合っているのかもしれない。この世は偶然の積み重ねなのだが、今の環境や状況をとてもありがたいと思う。