ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

お二階に来るかい?

ユクがどれくらい私たち人間の生活ルールを守ってくれるのか、など家へ迎えた当初は知る由もなかった。そのため、少し家を空ける、つまりお留守番をしてもらうときはケージに入れるようなことをしていた。
そのような期間はとても短かった。ユクが言ったことを守ってくれるし、人間がいないときには悪さやいたずらをしないということがすぐに分かったからだ。留守番用のカメラを付けて、留守中にどのような行動をするのか、近所に出掛けて外から確認したりもした。寝ているだけだ。何もしない。寝る、水を飲む、寝返りを打つ、ブルブルと身体を震わせる、ストレッチをする、以上。

いたずらは誰かがいないとおもしろくない。

寝るときも最初の最初だけ、ケージに入れて寝てもらった。が、何だかかわいそうだ。ケージの扉を開けて寝かせるようにした。やはり何も悪さなどしない。キッチンに勝手に入ったりもしない。ドッグフードやトリーツの在り処はもちろん知っているがこじ開けようなどということは絶対にしない。

お行儀は良いのよ。

こんなにも人間との暮らしに適応するものなのだ、と正直驚いた。今でもまだ驚いている。犬、と一般化して話して良いのか、ユクとしか暮らしたことのない私には分からない。だが何となく、犬と人類の歴史を考えると、一般化もしたくなる。犬はすごい。

このようにして、私たち夫婦の信頼を得たユクは、二階へ上がることも許されて、今では人間の寝室で一緒に寝ている。

普段、私は二階で仕事をしている。二階を解禁する前は、見守りカメラを横目に仕事をしていた。今は違う。朝、朝食を終え、二階の仕事部屋へ上がる際にこう言う。「ユクも来ていいよ!」すると、窓辺で伏せて外を眺めていたユクは起き上がり、ブルブルをして、てくてくと私のあとを付いてくる。そして仕事机の横に置いてある犬用のベッドで仕事が終わるまで寝ている。

仕事中です。

一階で外を眺めているときは、ユクは少し気を張っている。侵入者がやってこないか見張っているようでもある。番犬気質があるのだ。
二階にいるときは、番犬業務はお休みのようだ。とてもリラックスしているように見える。ゆっくりできるのなら、なるべく連れてきてやりたい。だから上がるときはいつも言うのだ。「お二階に来るかい?」

机の横で仕事の終わりを待つユク坊。

ところで、番犬業務はまったくお願いしていない。
あと、「北鎌倉の門番」のような役割を自負しているようにも見えるが、せっかく観光の方が仲良くさせてくれようとしているのに、吠えてしまい、迷惑千万であるので、やめて欲しい。こればかりは、いくら叱ってもどうにもならない。

犬連れの観光客の皆様、本当にすみません。