ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

ある一日。お誕生日の犬。

ユクが三歳になった。
野良犬としての生活が数ヶ月間あり、明確なお誕生日は不明である。お医者さんに歯など見ていただき、推定何ヶ月齢というところから、九月生まれであろう、ということになった。いま、九月であるから、三歳ということになる。

うちへ来た当初は、少々やんちゃでも、まだ九ヶ月齢ですので、などと言い訳ができたことを懐かしく思う。三歳ともなると、成犬も成犬、子犬ですからという言い訳も立たない。

一歳未満(だった頃)のユク坊。

お誕生日というものも、犬にはまったく理解ができない、人間の勝手な記念日だ。お誕生日だから、特別に干し芋をあげたとしても、翌日に、昨日は干し芋をくれたのに、なぜ今日はない?という風になる。今日は特別、という概念を理解できないからだ。そんなこともあってか、あまりしっかりとお誕生日をお祝いすることもなく、お誕生日を迎えてしまった。

大人の顔。

言わば、いつもと同じ平日を過ごした。
私は仕事をし、仕事机の傍らでユクはベッドで丸くなって待っている。お昼になって、一緒に一階へ降りていき、人間が納豆卵かけご飯を食べる。ユクは横で待っている。「トレーニングのお時間」と呼んでいるお昼のおやつタイムが始まる。数粒のドライフードを片手に、オスワリ、オテ、アトヘ、マテ、オイデ、などを訓練(実際はぐだぐだです)する。トレーニングが終わると、窓辺で一緒に座る。ユクはこの時間が好きなようだ。とても従順で可愛い時間である。人間もこの時間が好きだ。

撫でる?

お昼休みが終わると、私はまた二階へ上がり、仕事を再開する。ユクも付いてきて、横で待っている。仕事中、ふと気配を感じてそちらを見ると、犬がヘソ天をしてアピールしていることもある。ヘソ天をしていたら、何をおいても、腹を撫でに行ってやることにしている。

夕刻。
一緒に一階へ降りていき、ヤギミルクを飲ませてやる。散歩のため、首輪を付け替える。お散歩に行きたい犬は従順だ。オスワリして、首輪を外してもらうのを待っている。

少し涼しくなった外を、ユクと散歩する。
まだマダニが怖いので、山には行かない。市街地コースだ。

いつもと同じコースを歩いていたのだが、数頭の見知らぬ犬に出会った。
ユクはいつもの「興味はあるが、怖くて唸ってしまう」という状態になった。向こうの飼い主さんにもそれがバレていた。年齢を問われたので、三歳になりました、と申し上げた。それでは仕方ないねぇ、まだまだ遊びたいねぇ、と言ってくださった。

耳も立つぜ。

ユクにとってはいつもの、ある一日。
私にとっては特別な、ユクのお誕生日。