犬のシャンプーをした日の夜のみ、犬と一緒に寝る。という計画を立てたものの、すぐに破綻した。今日が特別である、という概念を犬が理解しないからである。昨日今日ということよりも、布団に入ってよし、とされた、ということが犬にとっては重要なことであり、昨日は良くて今日は駄目、ということが理解できない。
ゼロか百か、ということなら、百を選択せざるを得ない。ユクは人間の布団に上がれることをとても喜んでくれる。今日が特別であるどころか、毎日が特別なのだ。お布団たまらん、となっているユクを毎晩見るのが楽しみだ。
ユクは寝相が悪い。頭はいろいろな方向へ向いている。夜中目覚めると、眼前に犬の後ろ足、あの香ばしい肉球があることも。
寝相が悪いだけでなく、おそらく故意に身体をぶつけてくる。くるくる回ってからドスンと座る。座り姿は丸いドーナツのような感じだ。この形で寝ていることが多い。お腹周りを守りながらもすぐに反応もできるセキュリティ能力が高い態勢なのだと思われる。
一寸ほど人間の身体のうえに重なるように、絶妙な位置取りでドスンとやる犬。一瞬目が覚めるが、犬がぴったりとくっついているのを感じて、安心してまた眠りに就く。
夜中今度はブルブルと全身を震わせる。犬の身体はうまくできていて、頭をブルブルし始めて、そのブルブルが身体を通ってお尻のほうへ行き、最後はしっぽまでブルブルしている。ブルブルは前から後ろへ流れていくのだ。誰が教えるでもなく、このような動きをできていることに美しさを感じる。
このブルブルで、また少し目が覚める。
ブルブルの後、ユクは私の脚の間へ移動する。そしてあろうことか、そこで「くるくるドスン」を行う。私は蛙のような格好(?)でいる。股の間が犬の高めの体温で温められる。暑い。寝苦しい。目が覚めて困る。足をなめられてくすぐったい。ドスンとされて痛い。散々な目に遭っていることを私は妻にアピールする。
妻がひとこと。
うれしいんでしょ?
はい、そうです。