ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

海に着くなり、阿呆になる犬。馬鹿走りの記録。

ユクは海が大好きだ。
それは、海に着いた瞬間の様子を見れば分かる。いや、海を目前に控えた信号機の前で、鼻を利かせて海の香を味わっている様子からも明らかなのだ。犬がどのくらい頭の中に地図を描けているのか、私は知らない。しかし、散歩の始まりに、ユクの行きたがる方向が日々変わる。何かしら、頭の中の地図に照らし合わせて、方角を定めているようにも見える。匂いの要素もそこには関連しているのか。

ここまで来たら、行くでしょ?

海までは一時間弱ほど掛かるので、それは人間の仕事がお休みである週末であることが多い。その日も夏休み最後の週末であった。鶴岡八幡宮まで、ユクはグイグイと先導して歩いてきた。帰路に就くような感じはまったくない。まだまだ行く気でいっぱいである。もちろん、由比ヶ浜まで。

段葛は俺のもの。(ジャイアン気質発動中)

段葛を通り抜け、海が近づいてくる。海岸線の道路で信号待ち。
ここまでやって来ると、ユクのワクワクゲージも随分と上がってくる。信号が青になると、ゲートが開いた瞬間の競走馬のように駆け出す。

海はすぐそこ。

浜に着くと、うれしすぎて、一度「阿呆」になる。最初のうちは微笑ましく見てくださっている他の海水浴客の皆さんも、ユクの阿呆加減が激しさを増すに連れ、心配げな顔になってくる。はい、うちの犬はいつもこんな感じなので、ご心配無用です、となるべく平静を装い、犬をその場から海の方へと連れて行く。

これが最高なのよ。

一連の儀式が終わると、ユクは波打ち際まで走って行き、砂が濡れていないぎりぎりの線で伏せる。駆けてきたのではぁはぁと口は開いている。それが笑っているように見え、うれしそうにも見える。さんざん飼い主を振り回しておいて、自分だけまったりとし始めるのだ。

海は大好きだが、決して海には入らない。