家から海まで、少し距離はあるが徒歩で行ける。ユクと海に行きたい。妻はユクと海で一緒に泳ぎたいらしいが、私は浜にいてKindleを開いて眺めているほうが幸せである。まずもって海で濡れた足が嫌いだ。いつまでも濡れた砂が足の裏にこびりつくあの感覚をできる限り味わいたくない。海の家の床の、砂でザラザラした感触も昔から嫌だった。
さて、ユクはどのような反応を見せるのだろうか。
よく考えれば宮古島から来ているわけで、透き通るようなきれいな海で毎日バシャバシャと遊んでいたかもしれない。海に浸かることに抵抗のある私なんかより、ずっと海での遊びに長けている可能性もある。
浜に着いた。
ユクは前のめりだ。グイグイ行きたがっている。やはり海で遊びたいに違いない。ちょっと水に浸かってみるかい?と、あれあれ。波打ち際に数メートルの辺りで、ユクが踏みとどまって引き返そうとする。波に怯えてる?
ユクは海が怖いようだった。
これでは、サーフボードに乗せて、一緒にサーフィンをするという妻の夢もなかなか遠そうだ。それでも浜辺で走るのは好きなようだった。いいぞ!走れ 走れ!走ってどんどん悪い脚を鍛えるのだ。
楽しそうに駆け回っているユクと妻を小さなテントから眺めているのはとても愉快で、持参したKindleのことも忘れていた。
浜を駆け、鎌倉を沢山歩き、抱っこになることもなく、帰ってきた。しかし、玄関に入ったところで行き倒れたユクであった。