ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

草を食べた犬との糞まみれ地獄絵図。

朝の散歩でのこと。
その日、ユクを散歩に連れて行くついでにゴミ出しも担当した。ゴミステーションを経由するため、いつもとは違う方向へ歩く。ユクは素直に着いてきた。ゴミを出し終わり、いつものコースへ戻ろうと促したが、ユクはもう鶴岡八幡宮方面へ行く気満々の様子だ。仕方ない、付き合ってやるか。自分の要望が通ったことがうれしそうなユクの背中を見ながら、いざ鎌倉。

亀ヶ谷坂を登るユク坊。

そのまま建長寺方面を通っていくのかと思いきや、すっと亀ヶ谷坂を登り始めたユク。何となく私も亀ヶ谷坂を登りたいと考えていたので、気が合った。毎日、ユクのおかげで坂道を登る生活をしている。坂道には強くなった。亀ヶ谷坂だって、息は上がらない。四月の朝は気持ちが良い。鳥の鳴き声がこだまするが蚊は飛ばず、陽が暖かく射すが風が涼しい。最高だな、ユク坊。

登りきった坂を今度は下っていく。Apple Watchが一キロ地点の経過を告げる。鎌倉方面だと、この辺りが一キロ。大船方面へ歩くと、あの辺りが。感覚にずれがある。実際の距離と体感の距離は随分と違うのものだ。

散歩中は、ここを観察しています。

と、ユクが催した。「ポイ太くん」で処理をした。少し量が少なかった。再度歩き始めて、ユクのお尻を見ると、少し糞が出たままだ。ユクは気づいていないようだ。食べてしまった草がそのままお尻から出てきているように見えた。もう一度催すかもしれないから、いまはそっとしておこうと考えた。

ユクは、このまま若宮大路を抜け、由比ヶ浜まで行きたいに違いない。そんな犬をごまかしごまかし、八幡宮方面へのショートカットルートへ誘う。

行きたくない、と駄々をこねるときのユク坊。

鶴岡八幡宮の横の国道を通って、建長寺方面を目指す。ユクが催した。やはり。さっと脇道に入る。糞が切れない。ユクと私が双方「まずい!」となった。刹那、私は「ポイ太くん」でユクのお尻から出ているものを引き出そうとした。ユクは自分の口でそれを引き出そうとぐるぐると回り始める。うまくつかみ取れない。そこは、糞にまみれた地獄絵図となった。

ユクがうちへ来た当初の私なら、パニックで何もできなかったに違いない。今は違う。このような地獄に面していても至って冷静だ。ユクの頭を制し、お尻から長い草ごと抜き取った。

誰の話してんの?(あなたです!)

そしておもむろに、非常用としてバッグに忍ばせていた厚手のウェットティッシュを取り出し、糞にまみれたユクの口元とお尻をしっかりと拭った。

犬の飼い主としての自分の成長を噛みしめながら、地獄絵図が繰り広げられた現場を後にした。

いざ北鎌倉。