私は小学生の頃、家の留守を任されることがよくあった。共働きなわけではないのだが、母親は外での活動が多く、専業主婦の家のわりに留守番をすることが多かったと思う。共働き夫婦の児童は学童保育というところへ預けられる子たちもいたが、うちは一人息子の私に鍵が与えられていた。一人っ子であるし、留守番をよくしていたからか、独りでいることがまったく苦でない。いや、正確には友達を呼んで遊んでいたので、独りでいることは嫌だったのかもしれない。しかし、とても楽しくやっていた。
留守番のときは勝手におやつを食べていた。
おやつの在り処を知っていたので、そこを開けて食べた。冷蔵庫にあるものもよく飲んだ。ただ、今の時代ほど物に溢れているわけではないので、豪遊と呼べるほどのものではない。
子供の浅い考えなので、親にはすべてバレていたのだろうが、そのことで叱られた記憶はない。いや、叱られたこともあるかもしれない。が、都合よく忘れているだけなのか。
自分がそのような感じだったもので、ユクのお留守番の優秀さに感心している。
ユクはどこに食べ物がしまわれているのか、すべて知っている。鍵をかけたりしないし、ユクが本気を出せば、何とかそれらを引き出して容器を壊して食べられそうなものばかりだ。ところが、まったくそういうことをしない。
それは人間が見ていても見ていなくても同じだ。
お天道様が見ているよ、という言葉は人間のしつけによく使われる言葉だ。神様でも仏様でもない、お天道様って一体なんだろう。おひさまのことだな、きっと。
私はユクにとってのお天道様なのだろうか。
そう考えると何だか自分もきちんとしなくてはならんな、と思う。