ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

お留守番のとき、なにをしますか?

私はいわゆる「鍵っ子」だった。
私の育った昭和の時代は共働きは珍しく、ほとんどの家では母親が主婦として家に居たように思う。うちは基本的には共働きではなかったが、母親は何かと出かけていた。働きたかったようで、アルバイトなどをしていたようだった。いろいろと活動をする母親だったので、実際のところ、何をしていたのかはあまり理解していなかったが、絵を描いたり、英語を教えたりしていたことは憶えている。

俺はひまだ。

私本人は、鍵っ子である、とは思っていなかった。子供はそういうものだろう。自分の環境を素直に受け入れるものだ。首から鍵をぶら下げていることが普通であった。私は一人っ子だったので、お留守番のときは天下を取ったようなものだ。おやつの棚からクッキーを、冷蔵庫からオレンジジュースを、友達を呼んでプロレスごっこを、と好き放題やっていた。
おじいちゃんの遺品である、当時はまだ普及していなかったビデオデッキを近所の子供たちで囲み、骨折した競走馬の悲しい最期のドキュメンタリー番組の録画を観て、皆で涙したりしていた。

今は鍵を首からぶら下げている子供などいないのだろうか。時代的には、鍵を持たされている子供が増えているに違いない。

ユクが留守番が得意なことは前にも書いた。
しかし、得意なことと好きなことは違う。ユクは人が居てくれたほうがうれしいだろう。同じ時間、家に居ても、私は仕事、犬は昼寝、ということはよくある。ただし家に居れば、犬は寝るのに飽きたら人間を呼びに行くことができる。おもちゃを咥えて持ってきて、遊びに誘うこともできる。お留守番をしているときとは状況がまったく違うのだ。

こいつがどうなってもいいんだな?

ユクは一人遊びをしない。
人間が見ているときだけ、一人でも遊ぶ。一人で遊ぶというより、遊びを人間に見せつけて、誘っているように見える。もしくは獲物を仕留めているような仕草をして、人間を驚かせているつもりのようでもある。

犬に鍵を渡すわけには行かないので、お留守番の場合は、完全に閉じ込めておかねばならない。これがとても心苦しい。出かけていても犬が気になって仕方がない。

おでかけか?犬を忘れてないか?

それでも、人間が出かけることを受け入れて、何も騒ぐことなく見送ってくれるユクには感謝している。また、自由におやつを出してきて食い散らす、子供の頃の私のようなことをしないユクは、本当に偉い。素晴らしい犬がうちに来たものだ、といつも大げさに褒めてやっている。

「褒め」とかどうでもいいので、アレください。