今は寝坊助の私でも小学生の頃はとても早く起きた。日曜日には、早く起きすぎてドラえもんの放送が始まる時刻まで時間を持て余した。両親は大人で仕事のない日なので、まだ寝ている。もっと幼い頃はおそらく起こしに行ったりしていたのかもしれないが、小学生くらいになると分別もある。もう少し寝かせておいてやろう、と独りの時間を楽しむ。子供の私には面白くも何ともない音楽会の番組をうらめしく眺める。
歳の離れたいとこが家に泊まりに来たとき、私は大学生だった。いとこは二歳や三歳である。分別のないお年ごろのため、早朝に腹の上で飛び跳ねられて起こされたものだ。
ユクの朝の振る舞いはどうかといえば、三歳児ほどの無茶はしないが、小学生ほどの心配りもない、といったところか。
午前四時半ごろから、ムクッと起き始め、ぶるぶる身震いをして、起きていることを人間に知らせる。ベロンと舐めて起こすと嫌がられたり叱られるかも知れないことに少し配慮した行動だと思われる。
三歳児のように、腹の上で暴れたりはしない。では起こしたいときにどうやっているのか。ユクは人間の耳をぺろっとひと舐めすることで起こす。この程度なら𠮟られはしないし目覚めてくれることを学習したようだ。絶妙な塩梅である。
早朝にユクが起こすときは、布団の中に入れて欲しいときだ。掛布団を少し上に押し上げ、ユクが入れる空間を作ってやる。すると、マズルから布団の中に入ってきて、私の股の間で丸くなる。当然私は蛙のような格好になるが、ユクのために体勢を維持してやる。
しばらくすると水面に呼吸しに来るイルカのように股の間から這い上がってきて、私の頭の横でぷはぁと息を吐く。
未明こんなことを三回ほど繰り返した後。ユクがぶるぶる身震いを耳元で何度も行うようになる。そろそろ本格的に起きたいのだ。飛び跳ねたりして起こしはしない、あくまでも、ぶるぶるしたら人間が近くにいた、という体である。
小学生ほどでもないが、三歳児よりは（ずる）賢い。
