ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

お願いしていない番犬のお仕事。

ユクは愛玩のためにコントロールされて生まれてきた犬ではない。ましてや従順になるために子犬の頃から訓練されてきたわけでもない。生まれてから半年くらいは何をしていたのかも分からない。どのような状態で宮古島で保護されたのかも、私は知らない。ほっつき歩いていたのか、野良犬ながらにどなたかに世話をしてもらっていたのか。

世話してもらうのは得意。

そういった経緯もあって、生まれながらのペットとは違い、どうしても矯正できないこともある。たとえば、家の中で用を足すようにしつけようと、努力してみたが、どうしてもしてくれない。挙げ句、人間が根負けしてしまう。あまり我慢させすぎると犬の健康に良くなさそうなので、結局そのしつけは諦めた。雨だろうが嵐だろうが、屋外の散歩に連れていき、用を足させている。

雨装備のユク坊。何かを着るのは嫌がらない。

妙な縄張り意識も、三歳を過ぎたあたりから強くなってきた。「妙な」というのは人間側の価値観で、犬にとっては遺伝子に備わった自然な行動なのだと思う。自分のテリトリー(縄張り)に見知らぬ人が侵入してきたら、唸ったり吠えたりすることで威嚇し、仲間にその侵入を知らせているのだ。犬はそのような行動で、人間や犬の群れの安全を保ってきたのだろう。

円覚寺門前で勝手に番をするユク坊。

稀に観光客が家の敷地内に迷い込んだりすることもあるので、番犬として、役に立つこともある。しかし、その能力は、いまではほとんど役に立たっていない。
郵便や荷物を配達してくださる方々にも、たまに吠えてしまい、本当に申し訳ない。

ただ、このような犬達が居たからこそ、私達人間は他の獣に喰われず、生き延びてこられたのだ、と温かい目で見てやってください。

温かい目。