足首の怪我も癒えてきて、身体の調子も随分と良くなってきた。人間の話だ。
少しの間なら正座も出来るようになり、茶の点前も稽古できるようになった。人様の前で点前を行うのはまだ危険である、という自己判断から、新春茶会での濃茶点前はお休みさせていただくことにした。
ブラジリアン柔術の稽古も本格的に再開し、生活のリズムも出てきた。趣味で熱中するものというのは何でもそうなのかも知れないが、いま、自分の身辺にある雑事を一旦綺麗さっぱり忘れて打ち込むことのできる時間が、心身の健康にとても良いのだ。
特に格闘技である柔術は、仕事のことなどを考えている余地はない。ぼんやりしていると、首を絞められたり、腕を極められたりする。いやでも集中が求められる。
このように調子が戻ってきた矢先、柔術をしている最中に背中を痛めた。少しおかしな体勢になったのだが、そのおかしな形のまま馬鹿力をおかしな方向へ発揮した刹那、背中からビリッという音がした。おそらくは肉離れだと思われる。何らかの肉か筋(すじ)が骨から離れた感触がある。肉離れのネーミングセンスに感心する。
自分の持っている以上の力を出さないよう気を付けよう、と深く反省している。そして、気が乗らないので、取り組んでこなかった、筋力トレーニングをやろうと決意した。ここに書いて宣言することによって、自分を追い込んでいる。
ユクはワンプロが大好きだし、馬鹿走りもする。興奮が制御しきれず、脚の古傷が痛み、キャインと悲鳴をあげることもある。いや、正確に言えば、あった、である。ここ最近は、めっきり悲鳴をあげなくなった。
ワンプロをすることもあるし、馬鹿になって走り回ることもあるのに、だ。
もちろん、日々の散歩により、足回りの筋肉が鍛えられてきた、ということもある。しかし、それだけではなさそうだ。
お友達の犬と行われるワンプロの様子を観察してみると、ユクが先にやめてしまうことが多いと感じる。飽きたのか、マイペースな奴だ。
ふと、ここにユクの知恵があるのではないか、と思った。
自分のペースで無理をしない。
相手を巻き込むくらいのマイペース。
ユクを見習おう。