ユクの朝は早い。これはユクに限らず、犬の、と言うべきだろうか。見聞きした感じだと、太陽の早く昇る季節には、犬に早くから起こされる飼い主さんが多いように思われる。辺りが明るくなってくるとともに起き始めるのは自然だ。人間である私も本来はそうありたいが、日が暮れても仕事を続け、日が昇っても眠りこけている。まったく不自然極まりないことだ。
いま、私たちはユクと一緒に寝ている。ユクは人間の頭のほうで寝たり、足元で寝たり、人間の頭に足を向けて寝たりと自由にやっている。人間の枕を奪って寝ていることすらあるので、うかうかしていられない。
初夏。空が白み始める午前四時。ユクが起き始める。四時半くらいには、もう活動したくなっている。その気持ちはよく分かる。子供の頃には皆経験したのではなかろうか。早く起きてしまって、親を起こしたいが起こせないあのモヤモヤを。
ユクと一緒に寝始めた最初の頃は、顔を舐めたり、前足で顔を叩いたりして、人間を手荒く起こした。そういうことをすると人間が怒ることを学習して、無茶な起こし方は徐々にしなくなった。その代わり、わざと大きな音が出るように顎の下を掻く動作を行ったり、耳元でブルブルブルと身震いをしたり、ストレッチをしていたらたまたま足が当たってしまいましたという体で人間の頭を叩いたりするようになった。あまりそのように表現したくはないが、「賢い」奴だと思う。
少し遠慮の入っているところが可愛らしい。可愛いと言ってしまっている時点で、犬の術中にやはりはまってしまっている。